<ミャンマー現地報告3>内戦続くカレンニー州、戦時下で支え合う国内避難民(写真9枚+地図)
「戦闘で子どもたちの心は傷ついています。学校に来て勉強することで、子どもたちは辛い現実を一時でも忘れることができます。教育は子どもたちの将来のためにも大切です」 教員のジョスフィンさん(19歳)は、そう話す。 彼女自身も避難民だ。カレンニー州北部のディモーソー郡区から避難してきて3年になる。並行政権である国民統一政府(NUG)が実施した高校卒業認定試験に昨年合格したばかりだ。短期の教員養成の研修を受けて、ボランティア教員になった。月曜から金曜まで終日、教鞭をとる。3-Bキャンプでは、幼年生から8年生までの生徒185人を教員9人で教えている。
「生徒たちを一カ所に集めて教えることはできません。空爆の標的にされるおそれがあるからです」 キャンプの教育担当責任者ユスタートゥーさん(36歳)によると、国軍の戦闘機が飛んでくると、授業を中断し、生徒を帰宅させることもあるという。
2月にも州北部ディモーソー郡区で学校が空爆され、学校に通う子どもを含む5人が犠牲となった。カレンニー州では、これまで学校が8回空爆を受けている。 「子どもたちに絵を描かせると、戦争に関することばかり描きます。どんな夢があるかと訊くと、『大きくなったら、戦闘機の操縦士になりたい』などと答えます。私たちは、軍事に関することを忘れさせたい。本来の人生の夢を持てるようにしていきたいです」。
◆新しい将来の夢「教師になりたい」
カレンニー州暫定行政評議会(IEC)によると、実効支配地域内には、学校が456校あり、小学生から高校生までの生徒約4万6000人が学んでいる。教科書や校舎用のシートが不足しているという。 キャンプを案内してくれたアンジェラさんも、ボランティアの教師として教えている。 彼女は、クーデターのため、高校生にあたる9年生しか修了していない。元々、医科大学に進み、外科医になりたいという夢を持っていた。経済的な事情で治療を受けられず、障害を抱える者が親族に多くいたからだ。しかし、今の状況でその夢を叶えることは難しい。 今、彼女は、キャンプの子どもたちを教えるようになって、教師こそが自分の使命だと思うようになっている。 「子どもたちのために教える仕事をもっと向上させるため、やるべきことが多くあります。今は、これこそが自分の進むべき道だと思っています」。 カレンニー州解放区の自治は、こうした「人びとを助けたい」という一人ひとりの強い思いに支えられている。 いつか平和が戻り、安心して社会再建に取り組める日が訪れたとき、中核を担うのは、きっと彼らのような人たちにちがいない。 <了>
【地図】首都ネーピードーの東に位置するカヤー州は、人口も面積もミャンマー最小。抵抗勢力側は1948年独立当初の「カレンニー州」を用いる。カヤーは一民族を指し、カレンニーはこの地域に暮らす諸民族の総称を表すものと捉えている。(地図作成:アジアプレス)