<ミャンマー現地報告2>抵抗勢力の暫定統治進むカレンニー州、戦闘と空爆の爪痕(写真12枚+地図)
2023年6月、ミャンマー東部のカレンニー州メーセで国境警備隊(BGF)が蜂起。軍事政権と闘う抵抗勢力に合流し、国軍基地や官署を攻撃した。国軍側は空爆で応じ、住民の大半が町を脱出。戦闘と空爆で破壊されたメーセの町をカレンニー州警察(KSP)の警官たちと歩いた。(赤津陽治/アジアプレス) <ミャンマー現地報告1>内戦下のカレンニー州、抵抗勢力側独自の州警察に密着(写真6枚+地図)
◆住民脱出の町を警官が巡回
メーセ町内を巡回する警察のパトロール隊に同行した。隊員は二丁の銃を装備。うち一丁を持って歩く女性警官(18歳)に志願した動機を尋ねた。 「クーデターを起こした軍事独裁政権が嫌でした。人びとを守りたい。戦っている抵抗運動の仲間たちを何らかのかたちで支えたいと思ったのです」
メーセの町は閑散としていた。ほとんどの店は閉まり、住居に人が住む気配は感じられず、路上で住民の姿を見かけることもほとんどない。 住人のいない家々に盗みが入らないよう、パトロール隊が1日に3回、巡回する。
役所や官舎の大半が破壊され、焼かれていた。
旧メーセ警察署を訪れると、入口の壁は崩れ落ち、内部は破壊しつくされていた。 1階に残る鉄格子から留置場があったことが辛うじて分かった。 瓦礫の上を歩いて2階に上がると、床には警察文書が綴じられたファイルが無造作に散乱していた。 その上を土足で踏み歩いていく。
【左写真】旧メーセ警察署内。2023年6月の2週間に及んだ戦闘で破壊され、天井は崩れ落ちていた。(2024年2月、ミャンマー・カレンニー州メーセ、撮影:赤津陽治)
◆蜂起から始まったメーセの戦闘
「クーデター後もあの日までは、平和な町でした」。地元出身の男性警官(20歳)はそう話す。 2023年6月13日朝、銃声で目を覚ました。カレンニー武装勢力の合同部隊がメーセ警察署や周辺の国軍基地を一斉攻撃。 大半の基地を短時間のうちに攻略したが、警察署には、軍事政権側の警官や兵士が立てこもり、抗戦。 約2週間の戦闘の末、ようやく制圧した。
合同部隊で重要な役割を果たしたのが、元々メーセ地域に影響力を持つ、カレンニー諸民族人民解放戦線(KNPLF)という組織だ。 同組織は、1978年に創設され、ビルマ共産党の支援を受けて、勢力を保った。 その後、1994年に旧軍事政権と停戦。2009年に国境警備隊(BGF)として、国軍指揮下に編入された。 しかし、クーデターから2年4カ月が過ぎた2023年6月、ついに国軍に反旗を翻した。ミャンマー全国に数多くのBGFが存在するが、KNPLFは国軍に蜂起した最初のBGFだった。