苦節12年…逆転で悲願のJ2昇格を決めたSC相模原の劇的ドラマ
本拠地とする相模原ギオンスタジアムが座席数やナイター照明設備、トイレの数、メディアの作業部屋などで基準を満たしておらず、JリーグからJ2クラブライセンスが交付されない状況が続いた。 これでは例えJ3リーグを制しても、J2へ昇格することはかなわない。相模原市側との話し合いの場がもたれ、協力したい姿勢を示されるたびに、すべてを整えるために発生する数十億円規模の費用が常に障害となった。Jリーグ事務局へJ2クラブライセンスの申請すらできないシーズンを余儀なくされていたなかで、代表取締役会長に就いていた望月氏はこんな言葉を残したことがある。 「勝ってもJ2に上がれない、という状況を作らないと難しい」 相模原のファン・サポーターを中心に「優勝したのになぜ」という世論を起こし、行政を後押しする力に変えていく。ただ、J3リーグにおける成績も2014シーズンは6位、2015シーズンには4位に入ったものの、2016シーズン以降は11位、12位、9位、15位に甘んじてきた軌跡を、望月氏は「何を目標に戦うべきかが難しい時期もあった」と昇格を報告するコメントのなかで振り返っている。 風向きが変わり、視界が一気に良好となったのが、新型コロナウイルスの影響で当初の3月上旬が6月下旬にずれ込んだ今シーズンの開幕前だった。ちょうど来シーズンのクラブライセンス申請の時期と重なったなかで、相模原は満を持してJ2クラブライセンスを申請する準備を整えていた。 Jリーグは2018年末の段階で、厳格に定められていたクラブライセンス制度の一部を一定の条件下で緩和している。具体的にはスタジアム改修工事がすでに着工され、3年以内に完成可能な場合に上位ライセンスが取得可能になっただけでなく、Jリーグが掲げる理想的なスタジアムを整備できる場合にも、5年の猶予が認められた上で同じく上位ライセンスが取得可能になった。