「若い世代はLINEで『あけおめ』。郵便の出し方を知らない」応募ハガキが激減した全国コンクール“ハガキでごめんなさい”が示した日本社会の変化
漫画家の故やなせたかしさん(1919年~2013年)が故郷の「地域起こし」のためにと発案し、高知県南国市の後免(ごめん)町の住民が続けてきた「ハガキでごめんなさい」全国コンクール。言いそびれた「ごめんなさい」を「ごめんの町」にハガキで送ってもらう取り組みだ。第21回を迎えた2024年度は、12月26日に最終選考が行われる。 【写真】この記事の写真を見る(12枚) ところが、応募数が激減してしまった。20年以上続いた催しのかつてない苦境。すぐに思い当たる原因はハガキの値上げだが、果たしてそれだけが理由なのか。関係者の話を聞いていくと、日本社会の深いところで進行する「変化」が見えてくる。
「来年はやなせ先生のテレビドラマが放映されるというのに……」
「このままだと100通ほどにしかならないかもしれません」 コンクールの事務局が置かれている南国市観光協会。担当職員の竹中瑞紀さん(31)がため息をついた。 「来年はやなせ先生のテレビドラマが放映されるというのに……」。観光協会の安岡知子・事務局長(41)は言葉が出ない。 やなせさんと妻の暢(のぶ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』が2025年春に始まる。そうした話題性に注目が集まり、応募が増えるかと思いきや、よもやの激減だった。 2024年10月末、南国市観光協会へ取材に訪れた時の会話である。応募の締め切りは11月末と、1カ月後に迫っていた。 過去5年間の応募数は第16回1927通、第17回2333通、第18回1849通、第19回1772通、第20回1688通。 例年ならダンボール箱にどっさり届いている時期だ。しかし、あまりに少ないので小さな菓子箱に入れるしかなく、それでも隙間だらけで振ったらカサカサと音がしていた。 「なんとかして応募を増やしたい」と思っても宣伝費がなかった。無料で公募情報を載せてもらえるウェブサイトにお願いしたり、四国各県の記者クラブにプレスリリースを送ったり、地元の『高知新聞』に募集記事を書いてもらったりして、ラストスパートをかけた。 それでも締め切りまであと2日という時点で確認すると、「300通ちょっとしか集まっていません」と竹中さんはうなだれていた。前年度の5分の1以下というレベルだ。 最終的にどうなったのか。今年度はギリギリになって届いた枚数が驚くほど多く、計1094通が寄せられた。