「若い世代はLINEで『あけおめ』。郵便の出し方を知らない」応募ハガキが激減した全国コンクール“ハガキでごめんなさい”が示した日本社会の変化
デジタル化が進んだ「ごめんなさい」の軽さ
徳久さんはこれらハガキを取り巻く環境に加え、「手で書く機会が減ったのも影響しているのではないか」と見ている。「実は私も会社の机に筆記用具を一切置いていません。稟議書はパソコンに送られてくるし、印鑑の代わりにサインを貼り付けるので、書く必要がないのです」と話す。 コンクールではそうした社会変化に対応し、メールで募集したことがある。 だが、「すごく味気のない内容が多く寄せられました。文面からなかなか感情が伝わってこないのです。これはダメだとすぐに止めてしまいました」と安岡事務局長が明かす。 どうしてなのだろう。 『アンパンマン』の生みの親のやなせさんが発案したコンクールだけに、ハガキに絵を描いて応募する人が多い。文字に工夫を凝らす人もいる。そのため、ハガキを見ているだけで楽しくなったり、泣けてきたりする。 徳久さんは「人の手が加わったハガキは、文字だけでも心が伝わります」と話す。 これを強く意識するのは高校生のテストを採点している時だ。 徳久さんはクリーニング会社の会長のかたわら、高校の国語科講師として教壇にも立っている。 「生徒が一生懸命に書いた答案用紙を見ていたら、上手な字であろうが、下手くそな字であろうが、それぞれの個性が伝わってきます。記述回答の欄には、何回も消して書き直したり、消した文字の跡が残っていたりして、こんなことも考えたのか、もう諦めたのかなどと、いろいろ想像してしまいます」 一方、社会でやり取りされる「ごめんなさい」はデジタル化が進み、SNSなどで伝えるケースが増えている。竹中さんは、こうした伝達手段の変化が「ごめんなさい」を変質させていると思うことがある。 「気軽に言えるようになりました。X(旧Twitter)などに『やっちまった。ごめんよ』みたいな乗りで簡単に投稿できます。相手が読もうが読むまいが、吐き出して懺悔(ざんげ)できるのです。もしかしたら、『ごめんなさい』自体が軽くなっているのかもしれません」