“飲酒運転”に“30キロオーバー”―「これがなぜ、危険運転にならないのか」 事故で家族3人を奪われた遺族が、分かりにくい法律に思うこと
▽立ち上がる遺族、8万3千人分の支え 「到底納得がいかない。捜査機関は事故原因を追及してもらいたい」。遺族は立ち上がった。罪名を危険運転に変える「訴因変更」を求めて前橋地検に要望書を提出したほか、厳罰を求める署名活動を前橋市内やオンラインで進めた。 地検はその後も捜査を続け、集まった証拠から飲酒の影響が認められると判断。最初の起訴から約1カ月後の10月、危険運転致死傷罪への訴因変更を請求し、前橋地裁に認められた。遺族が11月に地検を訪れて提出した厳罰を求める署名は約8万3千人分。 寛人さんの妻は提出後の取材にこう話した。「応援しているよ、と署名した多くの方が声をかけてくれて励みになった。用紙の分だけ、皆さんの気持ちも乗っていると感じる」 ▽曖昧な規定、捜査機関の判断にぶれ? なぜ警察と検察で、適用する法律の規定が異なるという判断になったのか。 先に説明したように、現在の自動車運転処罰法では、危険運転を適用するには「制御困難な高速度」「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」といった要件が必要だ。
だが、どれくらいのスピードだと「制御困難」なのか、正常な運転が困難になるほどのアルコールの影響とはどれくらいなのか。規定が曖昧なため、捜査機関の判断にも結果としてぶれが生じやすいとされている。 遺族らの不満もここに集中しており、見直しを求める声は根強い。法務省は要望などを踏まえ、規定の在り方に関する議論に着手した。 こうした動きについて、取材に応じた正宏さんの母は「はっきりとした設定を作って、もっと簡単明瞭にしてほしい」と訴える。愛する息子、孫、ひ孫の尊い命をいっぺんに奪われた。「アルコールの量、度数にかかわらず、一滴でも飲んで運転をしたら危険運転にしてほしい」 正宏さんの妻も「私たち一般人にとっては難しすぎる。もっと端的に、かみ砕いて、私たちでも分かるような法律を」と求め「加害者寄りの法律という印象がある」との不満も口にした。 ▽「正常な運転ができていた」なら、なぜ大切な人を失わなければならなかったのか