“飲酒運転”に“30キロオーバー”―「これがなぜ、危険運転にならないのか」 事故で家族3人を奪われた遺族が、分かりにくい法律に思うこと
5月の大型連休最終日の夕方、群馬県伊勢崎市の国道で、レジャー施設からの帰り道だった家族3人の乗った車が対向車線をはみ出してきたトラックと衝突した。車は大破し、3人は亡くなった。 【写真】酒を飲み時速140キロ、男性を60メートルもはね飛ばしたひき逃げ犯 被害者は即死 事故当時、助手席の女性は「怖いって!アカンって!」と叫んだが… 捜査員は激怒「これが危険運転でなければ、何が危険運転に当たるんだ!」
警察の捜査で、トラックの運転手は酒を飲み、法定速度の30キロオーバーで運転したことが判明。警察は「危険運転」だとして運転手を逮捕した。しかしその後、検察は「危険運転」ではなく「過失運転」だと別の判断をして運転手を起訴した。 「納得いかない」。遺族は検察に再考を求めて働きかけ、起訴罪名は「危険運転」に変更された。努力は実ったものの、背景には「危険な運転か、そうでないか」の判断基準について曖昧な表現になっている法律がある。法務省も見直しに動いている規定のあり方。遺族はこう願う。「一滴でも酒を飲んで運転したら、危険運転にしてほしい」(共同通信=勝田涼斗) ▽トラックの車内には焼酎の空きボトルが… 事故が起きたのは5月6日午後4時15分ごろ。伊勢崎市の国道17号で法定速度を超える時速90キロまで加速したトラックが、対向車線にはみ出して乗用車2台に衝突。うち1台は大破し、乗っていた塚越正宏(つかごし・まさひろ)さん(53)、息子の寛人(ひろと)さん(26)、孫の湊斗(みなと)ちゃん(2)が亡くなった。
群馬県警は3カ月超が過ぎた8月20日、酒を飲んで運転していたとして、トラック運転手の男(70)を逮捕した。容疑名は自動車運転処罰法違反で、その中の規定の一つ「危険運転致死傷」に当たるとされた。「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」や、「進行を制御することが困難な高速度」で運転した場合に適用される規定だ。 県警などによると、男は出勤時のアルコール検査で問題はなく、その後運転を始めるまでの約40分間で飲酒したとみられる。勤務先によると、事故後の車内から焼酎の空きボトルが複数見つかっていた。 しかし、前橋地検が9月10日に男を起訴したとき、罪名は変わっていた。同じ自動車運転処罰法の中の規定でも、「危険運転致死傷」ではなく「過失致死傷」罪になっていたのだ。これは「必要な注意を怠り、人を死傷させた」場合に適用される規定だ。危険運転の法定刑の上限は懲役20年だが、過失運転のそれは懲役7年。差は大きい。