頭痛に嘔吐、ふつうの風邪と似ているのに…小児科医が最も注意している、命に関わる「症状」と「病気」
症状の重さと長さ
症状が軽いときとか、症状があいまいなときは、ぼくは毎回話を整理する。まず、子どもがその症状によってどのくらいつらいのか。日常生活が回っていかないくらいつらいのか。学校に行けないほどつらいのか。夜眠れないほどつらいのか。 するとほぼ100%のケースで、そこまでつらくないという答えが返ってくる。「だったら、経過を見ることが重要です」というのがぼくの答えだ。 なぜならば、病気の深刻さというのは、「症状の重さ」と「症状の長さ」とを掛け合わせた積の大きさで決まるからである。医者はすぐに「様子を見ましょう」と言うが、それはこの積の大きさを見定めようとしているのである。 「症状が続くならまた明日来てみてください。繰り返し診察しますから」というと、本人も家族も納得してくれる。医者にとって患者を繰り返し診ることは基本のキであるし、患者家族も医者から見放されるようなことを言われるが一番イヤなはずである。 ところが医者の中には、こうしたあいまいな訴えをする患者に対して、根拠もなく「大したことないよ」と鼻で笑うような対応する人がいる。自分の長年の経験からそう決めつけているのだろうが、そういう言い方は患者家族にはキツい。 医者は困っている人を笑ってはいけない。みなさんから見た場合、自分が困っているのに真剣に取り合ってくれないなら、その医者はあなたにとって必要ない。
軽症患者を診るのが開業医の役割
ここまで、軽症患者と、訴えがあいまいな患者がある意味で一番難しいことを述べたが、これは「受診する必要なし」ということを言いたいわけではない。いや、むしろ開業医を利用してほしい。 国は、大病院(大学などの特定機能病院や200床以上の大型病院など)へは重症や難病の患者だけが受診するように誘導していることは、みなさんもご存じだろう。紹介状なしで大病院を受診すると、診察料のほかに特別料金がかかる。初診時は、2022年10月から7700円(税込)で、これは全額自己負担である。 開業医は自分のホームページなどで、受診の目安などをよく掲載している。ぼくも『子どもの危険な病気のサインがわかる本』(講談社)という本を書いて、みなさんの役に立ってもらおうと考えた。 しかし、これらはアブナイ病気を見逃さずに早く受診してくださいということを言っているのであり、軽症や症状がはっきりしない患者は受診しないでくれということとはまったく違う。そこは誤解してほしくない。 困りごとの相談に乗るのが、かかりつけ医の仕事である。 【つづきを読む】『大学病院をやめてはじめてわかった…! 小児外科医が明かす「開業医の正体」と「意外な現実」』
松永 正訓(小児外科医)