巨人・船迫大雅、3度の指名漏れから“新人王”になるまで
2024年シーズン、セ・リーグの新人王を獲得。2年目で中継ぎとして51試合に登板し、4年ぶりのリーグ優勝に貢献した巨人・船迫大雅(ふなばさま ひろまさ)がスターとなる前夜に迫った。
セ・リーグの新人王
2024年も多くの新星が飛び出してきたプロ野球。その1人がセ・リーグで新人王に輝いた船迫大雅(巨人)だ。 ルーキーイヤーの2023年は36試合に登板して3勝8ホールドをマーク。そして2年目の2024年は51試合で4勝0敗22ホールド、防御率2.37と大きく成績を伸ばし、チームのリーグ優勝にも貢献したのだ。
プロ志望届を提出するも社会人野球に
そんな船迫は福島県の強豪である聖光学院の出身で、3年夏にはエースとして甲子園に出場し、チームをベスト8に導いている。 しかし当時は体が細く、ストレートも135キロ程度でプロのスカウト陣から注目されるような投手ではなかった。当時のノートを見ても船迫のピッチングに関しては詳細なメモは残っていない。 卒業後は東日本国際大に進学すると、1年春から投手陣の一角として定着。年々スピードもアップし、4年時にはドラフト候補の1人として名前が挙がるまでになった。 特に印象に残っているのが4年春のシーズン前、3月3日に法政大と行ったオープン戦でのピッチングだ。 法政大は3番が現在、社会人で屈指の強打者となっている向山基生(現・NTT東日本)、4番がこの後プロに進んだ福田光輝(元日本ハム)など力のある選手が揃っていたが、そんな打線を相手に6回を投げて被安打4、6奪三振で無失点という見事な投球を見せたのだ。 当時のノートには以下のようなメモが残っている。 「細身だが、とにかく腕がよく振れており、フォームの躍動感も申し分ない。ストレートは140キロ台前半でも手元で勢いがある。 それ以上に素晴らしいのがスライダー。ストレートと変わらない腕の振りで投げられ、打者の手元で鋭く横に変化する。スピードと変化の大きさにもバリエーションがあり、コントロールも安定。右打者の内角に狙って投げられ、腰を引くくらいの変化。 カーブで緩急もつけられるが、シンカーやチェンジアップなどシュート系のボールの精度には課題残る」 4年春に出場した大学選手権でも神奈川大を相手に勝利投手になるなど全国の舞台でも好投を見せている。 しかしストレートは140キロ前半で大学生としてはそれほど速さはなく、プロ志望届を提出したものの指名はなく西濃運輸に進んだ。 社会人では1年目に右肘を故障して出遅れると、ドラフト指名解禁となる2年目の2020年はコロナ禍で公式戦が少なくアピールできず、翌2021年もまずまずの成績は残したものの2年続けて指名は見送られた。