巨人・船迫大雅、3度の指名漏れから“新人王”になるまで
3度の指名漏れからの快挙
大学卒の社会人の場合は3年目に指名がないと一気にプロ入りの確立は低くなるが、船迫はここから驚きの成長を見せることになる。 強烈だったのが2021年のドラフト会議後に行われた都市対抗、日本製鉄かずさマジック戦での投球だ(都市対抗野球は例年夏に開催されるが、この年は東京五輪の影響で秋に開催となった)。 立ち上がりから最速150キロをマークしていきなり三者連続三振を奪うと、3回にソロホームランを浴びたものの5回を投げて1失点という見事な投球を見せたのだ。 当時のノートには以下のように書かれている。 「今まで見たなかで最高の出来。フォームの躍動感がリリースに伝わり、どこまでも伸びていきそうな勢いのストレートは常時140キロ台後半をマーク。 右打者にも左打者にも内角の厳しいコースにねじ込むように速いボールを投げ込み、シュートも143キロをマーク。130キロ台のスライダーも生き物のように鋭く変化し、シンカーもスライダーと変わらないスピードで鋭く沈む。 (中略) 少し不用意に投げた甘いボールをホームランにされたのはもったいない。立ち上がりから飛ばし過ぎたせいか5回に脚が攣(つ)ったが、立ち上がりの投球はプロでもなかなか見ないレベルだった。リリーフなら即戦力として期待できる」 翌2022年もこの勢いを維持し、都市対抗予選では4試合、17回1/3を投げて1失点、防御率0.52という圧巻の投球でチームの本大会出場に貢献。社会人4年目の26歳にしてついにドラフト指名を勝ち取ったのだ。 大学4年時も含めると3度の指名漏れを経験しても気落ちすることなく、着実にレベルアップを果たしてきたことがプロでの活躍につながったと言えるだろう。 新たにライデル・マルティネスが巨人に加入し、ブルペン陣の争いはさらに激しさを増すことになる。スピードのあるサイドスローというのは貴重な存在なだけに、2025年もフル回転での活躍を見せてくれることを期待したい。
TEXT=西尾典文 PHOTOGRAPH=西尾典文