自然派ブームの思わぬ盲点? 頭痛のしない赤ワインを選ぶには
赤ワインを飲むと頭がズキズキと痛くなる人は少なくない。白ワインや他のお酒では症状が出ないのになぜ? その理由は、赤ワインに含まれる「生体アミン」という物質かもしれない。この生体アミンで7~8%の人が体調不良になるという調査もある。避ける方法はないのか。専門家によると、ワイン選びにコツがあるという。 【写真】愛飲者愛から開発 “飲みづらいグラス” 栃木県足利市の「Cfaバックヤードワイナリー」の醸造家、増子春香さん(43)は仕事柄、さまざまなワインを試飲する機会が多い。ところが、あるタイプの赤ワインを飲むと体調不良が起きてしまう。「1時間後にはズキズキするような頭痛と吐き気、紅潮などの症状が表れる。水をたくさん飲むと改善するが、症状がなくなるまで約半日かかる」という。 原因として考えられるのが、ワインの中に含まれる生体アミンに体が反応している可能性だ。 生体アミンはアミノ酸から生成される化合物だ。ワインに含まれているのは主に、チラミン▽ヒスタミン▽カダベリン▽プトレシン――の4種類。中でもチラミンは、神経伝達物質ノルアドレナリンの分泌を促す。それにより交感神経が興奮し、多くの血管が収縮する。その結果、頭痛や血圧上昇、吐き気などが起きるというわけだ。 生体アミンを分解する酵素が少なく、摂取すると体調不良になる「生体アミン不耐症」の有症率は人口の7~8%とされ、国内の一般的な食物アレルギーの有症率1~2%と比べても割合が多い。 「ワインの科学」などの著書がある醸造学者の清水健一さんによると、生体アミンは赤ワインの酸味をまろやかにするための乳酸発酵の過程で作られる。この時、「オエノコッカス」という乳酸菌を添加するとチラミンは生まれないが、収穫したブドウに自然に付いている「ラクトバチルス」という乳酸菌を使うと多く生成されるという。 フランスやドイツ、オーストラリアなどでは、ワイン中の生体アミンの含有量に上限が定められている。一方、日本にはそうした基準がなく、生体アミンの多いワインがそうでないワインと並べて売られている。 では、頭痛などの症状が出る人は生体アミンの少ないワインをどう選べばいいのか。 清水さんは「『自然派』や『有機』などとラベルに記されているワインは避けるのが無難」と説く。そうしたワインは、ラクトバチルスを乳酸発酵に使っていることが多いからだ。 清水さんは「近年の自然派ワインブームで、生体アミンの含有量の多いワインが大量に流通しているのが現状だ。ただし、含有量の少ない自然派ワインもある。含有量をラベルに表示するなどの自主基準を業界で作ってはどうか」と話している。【井出礼子】