「めまい、耳鳴り、難聴」の3点セットが現れるメニエール病の最新情報【40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! ⑩】
独自の新しい検査方法で診断もスムーズに!
メニエール病の症状があっても、実際に確定診断がされているのは1割くらいなのだそう。その理由は「日本めまい平衡医学会」の診断基準の厳格さにあると石井先生。 「その診断のひとつに、内耳のむくみ状態を確認するために行う、造影剤を使用した『3テスラMRI』という画像検査があります。この場合、MRI撮影の4時間前に造影剤を注射投与しなければならず、時間的にも手軽な検査とはいえません。さらに喘息発作、腎不全、造影剤に対するアレルギーなどがある人は受けられません。 そこで、私のシモヤケ理論を前提に、造影剤を用いずにMRI撮影ができる方法を開発しました。 造影剤を使用せずに撮影すると、内リンパと外リンパの境目がはっきりせず、鮮明な画像になりません。そこで、むくみの部分に集まっているカリウムイオンと炎症性タンパク質に焦点を当てた、撮影装置のパラメータ(機械で調整する値)を研究したのです。 こうして、造影剤を用いた画像と比べると少しだけ解像度は落ちますが、内リンパ水腫を写し出すことに世界で初めて成功したのです。MRIの機種にはさまざまありますが、造影剤なしでの撮影に向いていたのがフィリップス製でした。 ただし、この造影剤を用いない方法にも欠点があります。メニエール病の重症度にはステージ1~5までありますが、1~2の軽度な病態では写し出せる確率が少し落ちる点です。一方でステージが3~5の病態では確率はかなり上がります」 この発見・開発が画期的であることは間違いなく、現在、さらに解像度を上げる方法を開発しており、シモヤケ理論とこの検査方法の論文は、今、世界中で注目されている。この検査方法は石井先生が週に2回外来を担当している「AIC八重洲クリニック」などで、すでに実用化しているそうだ。
発症して2年以内の治療が重要!
メニエール病で重要なのは、発症してから2年以内にしっかり治療することだと石井先生。治療の核となるのは、めまい発作を抑える薬物療法と、徹底的にストレスの軽減を図ること。シモヤケ理論からもその理由は明らかだ。 「引き金になるストレスを避け、十分な睡眠をとり、疲れをためないこと。そして適度な有酸素運動の習慣をつけ、自分に合ったリラクセーション方法などを身につけていきます。 薬も上手に取り入れて、めまい発作をコントロールしていくことも大切です。通常、内耳のむくみを取るための利尿剤や血管拡張剤、炎症を抑えるステロイド剤、吐き気が強い場合は乗り物酔いを防止するトラベルミンなどが処方されます。 私がよく処方するのはピレチア細粒です。高い抗ヒスタミン作用、鎮静作用、抗浮腫作用、制吐作用があり、服用後は約30分~1時間で収まってきます。 私は1包5mgのピレチア細粒にこだわっています。水なしで飲める手軽さと、即効性があるからです。『外出時も持ち歩き、ベッド脇や職場のデスクなど、あちこちに置いておき、発作が起こりそうな予感がしたときや、実際に発作が起きたときにすぐに飲むように』と指導しています。 この薬の優れているところは、たとえ発作が起きたあとでも、手の届くところに置いておけば、手のひらに顆粒を出してのせて、なめるようにして飲むことができるところです。いったん発作が起きると、水を用意したり、上を向いて飲み込むことが難しくなるのです。 ただし、眠くなる副作用があるので、車を運転するときは注意が必要です。それを逆手にとって、寝る前に服用することで、ぐっすり眠れる利点もあります」 メニエール病の症状があるのに、2年以上何もせずに放置していると、症状はどんどん悪化してしまう。やがて日常生活に支障が出るようになるので、その前にできるだけ早い段階で診断と治療を始めるようにしよう。