9万円ディナーを数時間で売り切る世界1シェフが「欧州からペルー」に戻った理由
「シェフハットをかぶっていないときは絵を描くのが趣味」というヴィルジリオ・マルティネス氏、46歳。しかし、 ペルーの首都リマにある彼の高級レストラン「セントラル」で食事をする客は、厨房においても発揮されるマルティネス氏の芸術家ぶりに感嘆するだろう。 ■妻も「世界最高の女性シェフ」 実に「1590PEN(約64000円)」の14コースメニューで彼が表現するのは、太平洋岸からアマゾンのジャングル、そしてアンデスの山頂まで、ラテンアメリカの高原、14の生態系だ。 2008年にオープンしたこのレストランが、名誉ある「世界のベストレストラン50」で2022年2位、2023年1位と、2年連続で世界トップレベルに格付けされているのも驚くことではない(ちなみに、南米レストランの1位獲得は本ランキング史上初)。 彼のペルー食材へのこだわりはレストランが追求する水準をはるかに超えている。マルティネスは「世界最高の女性シェフ」に選ばれたこともある料理研究家の妻ピア・レオンや、レストランの研究部門「マーテル・イニシアティバ」を率いる妹のマレナとともに、地元の食材のユニークさを最大限セントラルのメニューに取り入れるべく、自ら足繁くペルー各地を訪問するのだ。 先週、マルティネスはリマから36時間のフライトを乗り継ぎ、インドへ初めて降り立った。高級ホテル「Mumbai’s St Regis」のレストラン「Koishii」での限定ポップアップに参加するためだ。 この限定ディナーは、「Marriott Bonvoy」と、フードビジネスのコンサルティングを行うリサーチ・シェフたちによるグループ「Culinary Culture」がアメリカン・エキスプレスと共同で企画したもの。実に1人5万ルピー(約9万円)という値がつけられたが、なんとたった数時間で完売した。 ディナーでは、シーレタス(海の藻類)、チュルピ(山で採れるトウモロコシ)、ヤーコン(アマゾンで採れる塊茎)など、多彩な食材を使った8品のコースメニューが振る舞われたという。