「夢や希望なんて持たなくても大丈夫」未来ある中学生を前に禅僧が身もフタもない講演をした理由は
私は、人間にとって挫折は大事だと思います。なぜなら、そのとき人は損得勘定から離れられるからです。「自分の欲を満たしたい」「人から認めてもらいたい」「自分のためになることをしたい」……。 ふだん、人は得をしたいと思うところから動いています。「こうすればうまくいくかもしれない」「これをやれば得になるから、やってみよう」と考えがちです。 ■つまずくことで見極められる しかし、人生につまずくと、そんな算段は吹き飛びます。思いどおりにいかなかったとき、夢破れたときに、人は損得から離れ、自分が本当に大事にするものを見極めます。そして、それを見極めた後、自分の努力が報われるかどうかわからなくても、歩き始めます。 そんな人間には、ある種の凄みが備わるのです。だから、夢や希望が叶わなくても、がっかりすることはありません。 むしろ、夢や希望が人生の妨げになるかもしれません。夢も、希望も、じつは麻薬のようなものだからです。いつまでも叶わない夢を持ち続けているのは、夢という麻薬が切れたときの禁断症状が怖いからにすぎません。 本当は、夢と希望を持つことに疲れ切っているのなら、今後もそれを持ち続けるのか、それとも手放すのか。 「夢」の後ろに隠れた自分の本音を、一度徹底的に見てみることです。
南直哉