新幹線、なぜ「1日乗り放題券」がないのか? 今後はあり得る? 高速性と収益性のジレンマを解き明かす
閑散期活用の価格戦略と実験
今後、人口は徐々に減少し、2050年には総人口が約1億人にまで減少し、その後は1億人を下回ると予測されている。 このような状況を見据え、地域限定や閑散期に1日乗り放題券を試験的に導入することは十分に考えられる。筆者は、そうした試みが今後の可能性を探る上で重要だと考えている。また、 「動的価格設定(ダイナミックプライシング)」 との併用も有効な方法であり、特に閑散期にはこの実験が最適なタイミングとなるだろう。ダイナミックプライシングとは、需要と供給の状況に応じて、商品やサービスの価格をリアルタイムで調整する手法だ。これにより、企業は迅速に最適な価格を決定し、収益を最大化できる。例えば、航空券やホテルの宿泊料金、映画のチケットなどでは、ピーク時に価格が上がり、閑散時には価格が下がることがある。この価格の変動は、企業が需要の変動に柔軟に対応できるようにし、消費者にも価格のメリットを提供する。 さらに、環境負荷の軽減や地域活性化を目的として、新幹線の1日乗り放題券を導入することもひとつの選択肢となる。自動車からの転換を促すためのプロモーションも重要な施策となるだろう。新幹線が都市間移動の競争力を維持するためには、 「特定の区間に特化した乗り放題券」 の導入も検討できる。将来的な安定した経営戦略を構築するために、新幹線の1日乗り放題券の導入可能性を検証し、評価することが求められる。
「1日乗り放題券」の実験的可能性
新幹線の1日乗り放題券が存在しない理由は、 ・経済的な合理性 ・運行モデルの特性 にあると考えられる。鉄道事業者は、できるだけ多くの収益を上げることを目指しているため、その機会を失いたくないというのが本音だろう。 2025年3月の改正では、お得な乗り方がどんどん減っていくことが予想される。新型コロナウイルス感染症で失われた3年間を取り戻すため、また人件費の高騰や人手不足を見据えた自動運転技術の研究投資など、多額の資金を必要としている鉄道事業者の立場も理解できる。 しかし、固定観念にとらわれず、まずは実験的なアプローチで消費者の新たなニーズを満たせるかを評価する可能性はまだ残されている。もし1日乗り放題券が存在したら、皆さんはどのように利用するだろうか。
高山麻里(鉄道政策リサーチャー)