長引く咳で眠れない… しつこい咳の原因はコロナ? マイコ?
夜は副交感神経が優位になるため、体の緊張が緩んで気管支が狭くなり、咳が出やすいのです。また、明け方になって気温が下がったり、睡眠中の口呼吸で喉が乾いたりすると、気管支の粘膜が刺激されて咳が出やすくなります」
市販の咳止め薬を使うならピーク時の応急処置に
市販の咳止め薬や風邪薬に頼る人も多いが、咳は鼻や口から入ってきたウイルスなどの異物を気道から取り除こうとする体の防御反応ではないだろうか。薬で止めるのは逆効果な気もするが。 「そうですね。咳止めや風邪薬はあくまで対症療法であって、根本原因を解決するものではありませんしね。 とはいえ、咳がひどくて夜眠れない日が続くと、寝ている間に活動する体の再生工場が働かず、回復も遅くなります。 市販の咳止め薬や風邪薬は風邪などの感染症による咳をやわらげる効果はあるので、ピーク時の応急処置として服用するのはひとつの方法です。 ただし、湿った咳の場合、咳を止めると痰を出しづらくなり悪化してしまう恐れがあるので、痰を排出しやすくする去痰薬(痰切り薬)のほうがよいです」 市販薬は処方薬より効果が弱い分、副作用も少ないというイメージもあるが、若い世代を中心に市販の咳止め薬でのオーバードーズが社会問題になっている。 「はい、深刻な問題です。例えば、市販の咳止め薬に含まれている『コデイン』は脳の中枢神経に働きかけることで、強制的に咳が出るのを防ぐ成分ですが、医療用麻薬に指定されていて、12歳未満の子どもへの使用は禁止されています。 咳止め薬『メジコン』の主成分である『デキストロメトルファン』も、脳の中枢から咳を抑える作用があり、多量に使用すると幻覚を誘発することがあります。 応急処置で市販の咳止め薬を使う場合も必ず薬剤師に症状を説明し、相談して用法・用量を守りましょう」 咳が長引くからといって、咳止め薬を漫然と使用し続けるのは危険のようだ。 「市販薬を使うにしても1週間ほどに限ったほうがいいですね。どんな薬にも必ず副作用がありますし、漫然と服用し続けると依存を招いたり、代謝系に負担がかかり、体の自然免疫を妨げることになって、かえって回復が遅くなることもよくあります。また、そもそも何らかの原因がある場合、それをマスキングしてしまう可能性があります。 ウイルスや細菌による感染症の場合は、自分の免疫機能も作動しますし、一定の時間で治癒するということが見込めるので、夜、咳がひどくて眠れないときだけ市販の咳止め薬を効果的に使って様子を見てもいいでしょう。 一方、咳喘息は原因となるアレルゲンを突き止めて、それに対処しないと一向によくなりません。また、喘息が原因で咳が出ているときにコデインが含まれた咳止め薬を使用すると、かえって症状が悪化する恐れもあります。ほかにも長引く咳の陰には、喘息、肺炎や結核、肺がんなどの悪性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの病気が隠れている場合もあります。 咳が2週間以上止まらない場合や眠れないほど激しい咳が1週間ほど続く場合は、一般的な風邪とは違う病気の可能性があります。 まずは病院で血液検査やレントゲン、できればCTをとって、咳喘息の疑いがあるようなら呼吸器内科などで肺機能検査も受けることをおすすめします」 次回はウイルスや菌に感染しても咳などの不調を長引かせないコツやセルフケアを伝授していただく。お楽しみに!