X離れで好調の「Bluesky」とは--始める前に知っておきたい7つのこと
ソーシャルメディアの進化は終わった、と思うたびに新しい変化が起きる。Twitterは長年、多くのユーザーを集め、そのアルゴリズムによってユーザーが見る情報を操作してきた。しかしBlueskyの登場によって、人々は新たな選択肢を手にした。オープンソースのプロトコルを採用した分散型SNSのBlueskyは、フィードを管理する力をユーザーの手に戻そうしている。 Blueskyが一般公開されて以来、筆者はこの新しいSNSの仕組みを探ってきた。デジタル空間でのアイデンティティを自分の手で管理したい――そう考える人にとってBlueskyは新鮮な選択肢となるだろう。 Blueskyとは何か Blueskyは「AT Protocol」と呼ばれるプロトコルで構築されたSNSだ。何やら難しそうに聞こえるが、要するに同じAT Protocolを採用しているアプリ間であれば、自分のソーシャルグラフ(インターネット上で形成される人と人とのつながり)を共有できることを意味する。しかし、同じく分散型SNSの「Mastodon」と違い、Blueskyが採用するAT Protocolは現在のところ、「ActivityPub」(FediverseやMastodonが採用する標準規格)とは連携していない。Blueskyは今も独自の自己完結型エコシステムだ。 Mastodonと「Threads」はActivityPubに対応しているため、相互連携が可能だが、今のところBlueskyとは連携できない。しかし、新しいモバイルクライアントの「OpenViBE」を使えば、Bluesky、Mastodon、Threadsのフィードをまとめて見ることが可能だ。 この他、Blueskyについて知っておくべきことを紹介する。 1.ユーザーが急増中 Blueskyはめざましいスピードで成長している。特に先日の米大統領選挙以降は100万人以上もユーザーが増え、現在のユーザー数は1600万人を超える。これはElon Musk氏率いる「X」からの乗り換えを検討している人が増えている証拠だ。 Blueskyの人気は、Appleの米国向けアプリストアでThreads、「ChatGPT」、「TikTok」といったアプリを抑え、無料アプリの1位(本稿執筆時点)となっていることからもうかがえる。新機能も続々と追加されており、アルゴリズム偏重のプラットフォームにうんざりしていた人々に新鮮な経験をもたらしている。 2.アルゴリズムによるフィード操作がない SNSのアルゴリズムが自分の見る情報を決めてしまうことにうんざりしているなら、Blueskyは救世主となるかもしれない。Mastodonと同じく、Blueskyはフィードに表示される投稿が人気コンテストのように決められる中央集権型のアルゴリズムは採用していない。Blueskyに表示される投稿は、純粋にユーザーのリアクションに基づいている。つまり、投稿は実際に得た「いいね」やリポストの数をもとに自然に拡散され、ユーザーのフィードに表示される。 筆者も、投稿の表示頻度が操作されていないフィードには新鮮味を感じた。 3.フィード、リスト、スターターパックの概要 フィード:Blueskyの「フィード」は、ユーザーが選んだトピックや関心に基づいて作成される。従来型の中央集権的なプラットフォームでは、ユーザーが目にするものはアルゴリズムが決定していたが、Blueskyではユーザー自身がフィードを選ぶ。これは自分が消費するコンテンツを、自分の好みに合わせて、自分自身で制御できることを意味する。例えば、科学関連の話題に特化したフィードや、投稿頻度が低い相互フォロワーの投稿だけを集めたフィードをフォローすることも可能だ。このアプローチは、ユーザーが自分のタイムラインを自分で制御し、自分の関心に沿ったコンテンツを発見する助けになる。 リスト:「リスト」はアカウントをグループ化できる機能だが、他にもさまざまな使い方ができる。例えば、業界の専門家やニュースソースなど、特定のテーマに関わる重要アカウントのリストを作成したり、表示されるコンテンツを興味別に整理したりできる。作成したリストは自分のプロフィール上で公開することも可能だ。フォローすべきおすすめアカウントを他の人に紹介したり、安全やモデレーション上の目的でブロックしたアカウントを知らせたりするためにも使える。 スターターパック:2024年6月に導入された「スターターパック」は、最大150人のおすすめユーザーと最大3つのカスタムフィードをまとめたものだ。スターターパックの目的は、新規ユーザーが自分の興味に合ったアカウントやフィードをすぐに見つけ、フォローできるようにすることだ。既存ユーザーが作成し、公開したスターターパックを利用すれば、新規ユーザーは自分の興味に合わせて、Blueskyの世界にすぐに飛び込める。例えば、テクノロジー愛好家、LGBTQ+コミュニティー、特定の政治テーマに関するスターターパックを使えば、登録後すぐに興味のある分野の会話に参加できる。 4.ブロック機能は極めて強力 Blueskyのブロック機能はかなり強力だ。ブロックした相手とのつながりをデジタル空間から消し去ってくれるため、ユーザーの間では「Nuclear Block(核ブロック)」と呼ばれている。一度ブロックしてしまえば、相手がこちらの投稿を見ることはできない。引用してもできない。スレッドから自分へのメンションを削除したり、自分の投稿を引用した他のユーザーの投稿から、自分の投稿を切り離したりすることも可能だ。 これはトラブルの防止にも役に立つ。ユーザーは自分で問題を解決でき、コメントバトルで問題が長引く心配もない。もし誰が自分をブロックしているのか、自分がモデレーションリストに載っていないか気になる場合は、Blueskyとは別に運営されている「clearsky.app」を使って確認できる。 5. 「認証バッジ」代わりに独自ドメインを利用可能 Blueskyは本人認証に対するアプローチも独特だ。デフォルトでは「bsky.social」の前にハンドルネームが付くが、独自ドメインをハンドルネームとして登録することも可能だ。これは認証バッジのない認証バッジのようなもので、本人であることを簡単に証明できる。自分のプロフィールの信頼性を高めるシンプルな方法だ。 6.広告に頼らない収益化モデルとフェデレーション機能 Blueskyは広告を掲載しないことを約束しており、ユーザーのプライバシーを確保しつつ、サービスを収益化する方法を模索している。例えばサブスクリプションモデルを導入し、有料ユーザーは高画質動画の投稿やプロフィールのカスタマイズができるようにするという案もある。ただしXのアプローチと異なり、有料ユーザーの投稿を意図的に目立たせたり、「認証」バッジを付与したりすることはない。ハンドルネームには独自ドメインも利用可能だ。独自ドメインを使えば、自分のプロフィールをパーソナライズできるだけでなく、信頼性も高められる。またクリエイター向けには、カスタムフィードなどを作成して収益化し、Blueskyが少額の分け前を得るモデルの導入も検討されている。 フェデレーション機能の展開も始まり、ユーザーが独自にサーバー(PDS)をセットアップできるようになった。自分のデータを独自サーバー上でホスティングすれば、さらに細かい制御が可能になるだけでなく、Blueskyの分散型ネットワークにも直接的に貢献できる。 試してみたい人は、必要なBluesky PDSファイルをダウンロードして、サーバーを建ててみよう。Dockerのおかげでプロセスは簡素化されており、サーバーを簡単に管理し、セキュリティを確保できる。詳細なセットアップ手順はBlueskyのGitHubページやDiscordのAT Protocol PDS Adminsで公開されており、サポートも受けられる。 こうした収益化とフェデレーションの仕組みを通じて、Blueskyはコントロール、プライバシー、カスタマイズ性を備えたユーザー中心のプラットフォームとして独自の存在感を放っている。 7.優秀なBlueskyアプリ モバイル環境でBlueskyを使いたい人々のために、iPhoneとAndroid向けに公式アプリが用意されている。iPad向けの公式アプリはまだないが、前述したOpenViBEやSkeetsなど、サードパーティーから優秀なクライアントが出ている。公式のiPadアプリが登場するまでは、こうしたアプリが役に立つだろう。 「TweetDeck」を愛用していたなら、「Deck.blue」が気に入るはずだ。TweetDeck風のマルチカラムレイアウトを採用したサードパーティー製のウェブアプリで、複数の会話を簡単に追うことができる。こうしたアプリを使えば、自分のニーズに合わせてBlueskyの体験をカスタマイズできる。 Blueskyに参加すべきか アルゴリズム主導のフィードを捨て、ユーザーによる制御を優先するネットワークを試す準備ができているなら、Blueskyに時間をかける価値はあるかもしれない。X(旧Twitter)の完全互換ではないが、プライバシーを重視する分散型ネットワークで新たなスタートを切りたいならBlueskyにできることは多い。 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。