都知事選、50億円を有益に 抜け落ちている「3つの論点」
【論点3】 「都財政の破たんを避ける」
都は第1次・第2次緊急コロナ対策で9345億円(20年3月末)あった「財政調整基金」(貯金)をほぼ全部使った。本来、この「基金」は家庭でいう貯金で、不況などで歳入(税収)が大幅に減少した場合に行政サービスが回らなくなる事態を避けるためにあるカネだ。もちろん、政府のように赤字国債の大量発行で賄うというやり方よりはマシだが、この先展望があるかどうかだ。 もし第3次、第4次の更なるコロナ対策が必要になったらどうする。延期された五輪・パラリンピックの後始末にも数千億円掛かると言われる。景気の悪化で大幅都税収入の減収が予想され、法人事業税を中心に1~2兆円の減収すらあり得る。リーマン・ショック時で年間1兆円減だったが、それを上回る減収を予想する向きが多い。 「都は富裕団体」でカネの心配のない自治体だと言われてきた。事実、今は歳入の75%が自前の財源(地方税)だ。企業本社の集積があり好況時には税収も多い。景気変動の影響を受けやすいが地方法人二税(法人事業税と同住民税)が半分近くを占めるからだ。だが一転、不況に陥ると一気に1年で1兆円、2兆円の減収になる。 かつて青島幸男都政から1068億円という大赤字を受け継ぎ、99年4月都知事になった石原慎太郎は都の財政再建を旗印に職員を1万人以上削減。一般歳出を1兆円近くカットし黒字都政を実現している。そうした辛い経験から「財政調整基金」は少なくも1兆円規模は必要との考えの下、今日に至っている。 この先、都知事は経営者能力が強く問われよう。実際、1年間に1~2兆円の歳入欠陥が生じたらどうなるか。これまでの経験から、歳出の2~3割のカットをしなければ財政はもたない。しかし、都民に大きなしわ寄せの及ぶ様々な行政サービス、事業の大幅カットができるか。労組と向き合い組合交渉を重ねて人員削減をやる、都政の強い行政改革をやる自信はあるのか。ここが1年後辺りから厳しく問われてくる。 選挙戦では、カネのバラマキ合戦のような風潮が見られるが、足元の財政環境がそれを許すのか。目の前のコロナ対策を乗り切ったとしても次々に難問が待ち構えている。経営的側面から、誰にそうした都政のかじ取りを任せられるのか。問われているのは私たち有権者なのだ。