【新証言】FBIが隠し続けてきた謎のスパイ「シンカワ」とは何者か?真珠湾攻撃で暗躍した男の正体
しかし、最近になって公開されたFBIのファイルには、ある捜査官が日本のスパイに関するメモを書いていたことが示されていた。「エージェント・シンカワ」なる諜報員のことだ。 ファイルの中で、このFBI捜査官は書いている。謎の日本人エージェントが寝返り、アメリカ海軍のスパイになった。だが、フーバー長官から直接指令が届き、FBIにとってはまさに恥部というべき部分なので、シンカワの情報を部外者には話さないように、と釘を刺された――。 今こそ、「エージェント・シンカワ」なる人物の全貌が語られるべきであろう。FBIは最近、シンカワに関するファイルの約3分の2を公開した。さらにイギリスでも、MI5〔エムアイファイブ。軍事情報部第5課〕が、この人物に関する1000ページ以上のファイルを完全公開した。 ● 二重スパイ「シンカワ」は 日本人でもアメリカ人でもなかった 日本海軍の情報将校たちは、敗戦の迫る1945年、シンカワたちに関するファイルを燃やし、日吉の司令部〔海軍総隊司令部〕上空には何日間も煙が立ち込めた。だがシンカワの業績は、複数の日本海軍の提督による著書(いまだに英語には翻訳されていない)の回想録の中に、今も残っている。 日本のスパイだった「エージェント・シンカワ」は、確かに二重スパイだった。彼はアメリカ海軍情報局を支援し、日本の奇襲攻撃を予期させようとしたのである。しかしFBIはそれを信用せず、彼は現場から排除されてしまった。 実はシンカワは、日本人でもアメリカ人でもなかった。彼はイギリス人だったのである。しかも、ある意味でセレブ、VIPですらあった。 彼は遅まきながら、真珠湾攻撃を阻止するべくアメリカを支援しようと努力したのだが、一方で、攻撃の主力を担った日本の空母の設計に個人的に貢献していた。日本海軍は彼の助言を得て、有名な三菱の零式艦上戦闘機(零戦)の設計を変更した。さらにこの人物は、真珠湾攻撃で淵田中佐が使用した信号拳銃を生産した萱場製作所の最初の投資家ですらあった。 彼は長年にわたり、ビバリーヒルズに住んでいた。現在の価値で1400万ドル〔2023年時点で約22億円〕相当の豪邸である。彼はイギリス海軍のカリスマ・パイロットであり、第一次世界大戦の英雄でもあった。