【新証言】FBIが隠し続けてきた謎のスパイ「シンカワ」とは何者か?真珠湾攻撃で暗躍した男の正体
数分後、淵田は真珠湾に米軍の艦船を発見した。それは静かな日曜日の朝で、多くのアメリカ人水兵はまだ眠っていた。それから1時間以内に数千人が死亡し、アメリカ太平洋艦隊は壊滅状態となるのである――。 攻撃後の数日間、アメリカ人の大部分は3つの考えに取り憑かれていた。何が起こったのか?どうすれば日本人に復讐できるか?そして、これは誰の責任なのか? 数日後、J・エドガー・フーバー〔FBI=連邦捜査局長官〕が、ルーズベルト大統領に書簡を送った。この奇襲の責任は、現場の指揮官、及び外国海軍からの脅威を予測するための担当機関であるアメリカ海軍情報局(US Navy’s Officce of Naval Intelligence:ONI)にある。フーバーの指摘は正しく、確かにONIは混乱に陥っていた。つい3週間前に新しい局長が就任したばかりだったが、彼はこの年の間に着任した4人目の局長だった。 報道陣とアメリカ国民が、血眼になって犯人探しをしていた。そんな中で、アメリカ政府は「何が起こったのか」について初期調査を開始した。しかし、マジック計画の存在を秘匿する必要があったため、徹底調査は不可能だった。そしてフーバーが望んだ(そして意図した)ように、現場の指揮官だけが責任を負うべきである、という結論になった。こうして海軍のキンメル提督と、陸軍のウォルター・ショート中将が解任され、階級降等の憂き目を見た。 ● 謎の日本人エージェントが寝返り アメリカ海軍のスパイになった? 1944年になり、陸軍長官〔ヘンリー・スティムソン〕は大規模な調査を開始し、JAG(Judge Advocate General’s Corps:法務総監部)のヘンリー・クラウゼンを中心に据えた。クラウゼンは800ページにわたる報告書を発表し、責任は現地指揮官の2人だけにとどまるものではない、とした。 クラウゼンはマジックの機密ファイルに完全にアクセスする権限を持ち、海軍及び海軍情報局、陸軍情報部、ダグラス・マッカーサー元帥、国務省、ホワイトハウスを含む100人以上の人々に聴取して、この結論に達した。――しかし不思議なことに、FBI本部については不問に付された。 1982年、ジョン・トーランドは著書『真珠湾攻撃(Infamy:Pearl Harbor and Its Aftermath)』の中で、真珠湾で奇襲を受けた責任の多くは、ワシントンの上層部、それも名前が伏されている人々にある、と主張した。ただしこの時点で、本件に関するFBIの責任を示すような公的な証拠は何もなかった。