思春期になっても親子の関係を壊さない叱り方 池江璃花子さんの母が教えるルール
(2)短く叱る
叱るときは、端的に、短く、しっかりと叱ります。時間にしてみれば1分以内です。だらだらと長く叱ったところで、叱られるほうは次第に嫌な気持ちや、恐れる気持ちがふくらんでいくだけです。 「何をしてはいけないのか」「自分の行為をどう改めたらいいのか」という肝心な点が飛んでしまい、ただひたすら早くこの嫌な時間が過ぎ去ってほしいと願うだけになります。これでは叱っている意味がありません。 私の場合、メリハリを大切にしました。「普段はやさしいあのお母さんが、こんなに怒るの?」と子どもたちがびっくりするほど、時には泣き出してしまうほど、強い口調で叱ります。 それによって、子どもたちは自分のしたことの重大さに気がつくからです。中途半端な叱り方では注意程度に受け取られ、同じことを何度も繰り返さないといけませんし、繰り返したところであまり効果はありません。 私の場合は、烈火のごとく叱る。でも、それは1分間だけです。叱り終えたら、瞬時にもとの姿に戻ります。そしてもう、そのことには触れません。いつまでもネチネチと蒸し返したり、あとあとまでズルズルと引きずったりすることはありません。 目の前で起こった出来事に対して、短い時間でしっかりと叱りましょう。過去のことを持ち出して叱るのも禁物です。
(3)叱ったあとのフォローを忘れない
叱ったら、叱りっぱなしではいけません。あとで必ずフォローをするようにしてください。 人格ではなく、行為を叱られたのだとしても、子どもにとって叱られることは、やはりショックです。行為を叱られているにもかかわらず、「自分が叱られた」というほうに意識が向かい、「自分を否定された」と受け取ってしまう場合もあります。 ですから、叱ったらそのすぐあとに(泣くなど感情が高ぶっていたら、泣きやんで落ち着いてから)、 「お母さんはあなたのことが大好きよ」「あなたはとても素晴らしい子なのよ」「叱ったのは、あなたが悪い子だからじゃないよ。あなたが今やったことがいけなかったからだよ。あなたにそういうことをしてほしくないから、叱ったんだよ」 というメッセージを伝えることが大切です。 そして、肩を抱いたり、抱きしめたりといったスキンシップを取ってください。そのあと、子どもがいけない行為、してほしくない行為をやめたら、ほめてください。 「あ、やめたんだね。あなたならわかってくれると思っていたわ」「お母さんの言うこと、わかってくれたんだ。ありがとう。やっぱりあなたは素敵な子だね」 子どもはお母さんにほめられることが、一番うれしいのです。 こういうことが繰り返されていけば、子どもは、「親に叱られても、自分の人格まで否定されているわけではない」と、身体で理解するようになるでしょう。 やがて思春期になって、価値観の違いなどで親子がぶつかり合うことがあっても、根底のところでの信頼関係があれば、大きく道を外れていくようなことは避けられるのではないでしょうか。 【ポイント】親は、子どもに嫌われたくないなどという気持ちに打ち克ち、子どもの将来のために叱る。
池江美由紀(東京経営短期大学こども教育学科特別講師)