オン とアンダーアーマーの決算が浮き彫りにした、スポーツ市場の光と影
スポーツアパレル市場において、オン(On)とアンダーアーマー(Under Armour)は成長計画と四半期決算の両方で対極の立場にある。 アンダーアーマーの3月31日までの四半期の収益は5%減の13億ドル(約2041億円)だった。なお同期間中、オンを展開するオン・ホールディング(On Holding)の純売上高は20.9%増の5億820万スイスフラン(5億6100万ドル以上、約880億円)だった。またアンダーアーマーは再構築計画の一環として在庫数の削減を計画しており、オンは今後数カ月以内に新商品を展開する予定である。 このようにアンダーアーマーとオンは同じスポーツカテゴリーに属しながらも、異なる結果を迎えている。その要因のひとつとして、若きパフォーマンスブランドの人気が高まり、レガシーブランドが長年支配してきた市場を席巻していることが挙げられる。2000年代初頭には注目の若手新興ブランドとみなされていたアンダーアーマーも、今ではすっかりレガシーブランドの一員となったと言えるだろう。今年度通期については、オンは純売上高が少なくとも30%増加すると予想しており、アンダーアーマーは2桁台前半の減収を見込んでいる。
各ブランドの軌跡
オンは、スイスの元アイアンマンチャンピオンであるオリヴィエ・ベルンハルド氏がデイビッド・アレマン氏とキャスパー・コペッティ氏とともに2010年に設立したブランドだ。テニス界のスーパースターであるロジャー・フェデラー選手の支援も受けており、2021年には株式を公開した。2010年の設立当初の同社は、ほかにはないプレミアムなランニングシューズの開発に注力していた。コペッティ氏は以前、米モダンリテールに対し、オン創業当時は「市場でもっとも高価な商品でありたかった」と語っている。それ以降、同社はその技術的な専門知識を活かして、アパレルやアクセサリー、ほかのジャンルのシューズなど、ランニングシューズ以外のカテゴリーにも進出してきた。 アンダーアーマーは1996年に設立され、アスリート向けの涼しくて乾きやすく、そして軽量な各種素材を使用したパフォーマンス重視のスポーツウェアに注力してきた。しかしここ数年、アンダーアーマーはスポーツカテゴリーで競合ブランドとの差別化に苦しんでいる。また、コネクテッドフィットネスなどほかの分野への進出を進めるなかで、ブランドアイデンティティを進化させることにも苦戦している。昨年のちょうどこの時期に同社は、安定した収益成長と株主への利益還元を長期的に実現することを目標とする「プロテクトディスハウス3(Protect This House 3)」戦略を発表した。 「この分野の全体で勝者と敗者が生まれるだろう」 と、投資顧問会社のサイズモアキャピタル(Sizemore Capital)で最高投資責任者(CIO)を務めるチャールズ・ルイス・サイズモア氏は米モダンリテールに対して語り、「今のところ、オンは間違いなく勝者のひとりだ」と続けた。