ウクライナ戦争ドローン最前線を「新しい中世」という視点から解き明かしてみる【後編】
米軍無人機パイロットは、戦場から数万km離れた安全なラスベガスから無人機を操縦している。ラスベガスにいながらテロリストがアジトにいればそこを爆撃し、移動中の車の中ならば車ごと爆撃して、殺している。 彼らの中には、やがて精神的に病んでしまう人がいると聞く。しかし、ドローンパイロットは最前線から数十kmの地下壕にいて戦っている。それがゲームであれば画面上の撃破で終わる。しかし、実戦では敵兵を次々と殺している。人を殺す事に壁はないのだろうか。 「ゲームはこうすれば勝てるという試行錯誤がマストです。実際の戦争をテーマにしたゲームでも、人や戦車に対してドローンで自爆攻撃することもできます。実際のFPV自爆ドローン攻撃の映像では、直撃した後に砂嵐映像もしくはフリーズした映像になります。 実はこの最後の映像に一定の効果があるのでは?と考えています。ドローンは基本的にパイロット側に機体側の音は伝わらないので、断末魔を聞く事もないし、FPV自爆ドローンの場合には直撃すれば通信が遮断されて砂嵐映像に切り替わる事で敵兵士が吹き飛ぶところを見ないで済む。この描写はゲームやシミュレーターでも同様で、ゲームの場合にはご丁寧にリプレイがあるけど、実戦ではない。こんなところも変に意識しないで実戦でもやれてしまう理由なんだと思います」(量産型カスタム師) そこが、これまでの無人機パイロットと、現代戦のドローンパイロットの違いなのかもしれない。 ■これは軍事における21世紀の軍事革命なのか? ドローンが戦場にもたらしている変化は、軍事における革命(RMA)と呼べるのだろうか。 「戦闘機よりも低い空域で新しい戦闘空間を作ったという意味では、ドローンは過去の飛行機や潜水艦と同様の開拓者です。しかも過去の兵器と違うのはドローンはサイバー空間と現実のフィジカルな空間を結びつけていることです」(部谷氏) 「戦闘機はこのくらいの高さ、ヘリはこのくらいの高さを飛ぶというのは、何となく決められていました。今はドローンがやって来て、チャレンジして、その決まりを変化させている。本来の用途じゃないよね?というところまで来てしまっている。 それはもちろん予想できませんし、やってみないと分からな未知の世界。だから、ある種の実験と実戦体験が一緒に進んでるんだと思います。民生用ドローンが戦場で日々進化してる。ドローンに明るい未来の夢を託してきた人たちからすると嫌かも知れませんが、コレが現実です」(量産型カスタム師) 「ゲームは初期の頃、『こんなのやっていると頭が悪くなる』と言われました」(部谷氏) 「ゲーム脳とか騒いでる人もいましたが(笑)少なくともウクライナの戦場ではゲーマーは、有能な人材になっている」(量産型カスタム師)