ウクライナ戦争ドローン最前線を「新しい中世」という視点から解き明かしてみる【後編】
ロシア軍はやられているばかりではない。新たなドローンで対抗する。 「光ファイバーケーブルの有線ドローンですね」(量産型カスタム師) 「ロシア軍はウクライナ軍の電波戦に勝てない、と思ったのか未完成の光ファイバードローンを投入してきました。奇襲後1~2週間目くらいでした」(部谷氏) 前述したように、ウクライナ軍の電子ドローン部隊の妨害装置が稼働しているので、ロシア軍のドローンは飛べない。 「だから、電波はダメなので有線です。通常のFPVドローンの電波で伝送する操縦の信号と映像が光ファイバーを介して送られるので、電波を出さずに飛べる。飛距離は、光ファイバーケーブルの長さによるので10~20kmのタイプが確認されています。ウクライナ軍は数ヵ月前にテストで飛ばしていたが、ロシア軍は先に実戦に投入した事になります」(量産型カスタム師) ロシア軍の苦肉の策だ。しかし、そこまでドローンは戦いの帰趨(きすう)を左右するのだ。 「非常に安易なことで、光ファイバーケーブルで繋がっているので妨害装置の影響は受けません」(部谷氏) 「光ファイバーケーブルが巻いて収納された筒状の物がドローンに搭載されていて、それが伸び切る所まで飛行可能なんです。例えば20kmの長さならばそこまでしか飛べない。ただ、細い光ファイバーといえど有線なので、何かに引っ掛かったりする可能性も当然ありますし、直角に折り曲げたりすると光ファイバー線自体がダメになります。それらの事情もあって特筆すべき大きな戦果を出しているわけではないんだと思います。 たまにSNSで見かけるウクライナ軍の装甲車などへの攻撃映像を見ると、ある程度開けた場所で人間の背丈の高さくらいの低空を飛んでいるという特徴があって、例えば高度を上げると、その分の長さの光ファイバーケーブルを消費しますし、障害物があちこちにあって回り込んだりする場所での運用は難しいんだと思います。ちなみに、ロシア軍は当初、自分たちが開発したと言っていましたが、実は中国製で、光ファイバーケーブルの長さによって約7~11万円くらいで売っているという情報もSNSで流れています」(量産型カスタム師) ロシア軍の光ファイバードローンは、霧散するのか?。 「ロシア軍は奇襲された後、1ヶ月かけて周波数以外のさまざまな電子戦の技術を改良したり、アップデートしました。さらに技術だけではダメなので、戦術面の運用、研究をし、やっと1ヶ月を経て、ロシア軍はドローンで反撃できるようになりました」(部谷氏) そこから、最前線の事態は激変する。