ウクライナ戦争ドローン最前線を「新しい中世」という視点から解き明かしてみる【後編】
空には両軍の偵察ドローンと、FPV自爆ドローンが無数に飛んでいる。昼間に少しでも戦車や装甲車両が動けば、上空の無人偵察機が発見して、FPV自爆ドローンを飛ばして破壊。兵士が動けば、発見し、瞬時にFPV自爆ドローンに爆殺される。 一例を記述すると、FPV自爆ドローンは兵が最初に隠れた車庫を破壊。すると、そこからひとりの兵が逃げ、近くの民家に逃げ込む。それを上空にいる偵察ドローンは見逃さない。すぐに別の爆弾を搭載した爆撃ドローンをその民家に派遣し、建物ごと吹き飛ばした。ひとりも敵兵は逃さない。 では、夜間に動けばいいのでは?となるが、それもままならない。今度は、サーマルカメラを搭載したドローンが飛び、戦車、車両、兵員を発見して、破壊もしくは爆殺する。この戦いで両軍は昼夜動けず、膠着状態に入る。 「だから、夜だけは一応動いている感じです。しかし、ロシア軍が対サーマルカメラ用断熱シートを被ってもそこだけサーマルカメラでは変な風に写るんですね」(部谷氏) 「本来サーマルカメラを欺くにはシートが外に発する温度が周囲の環境温度と馴染まないと意味がないので、ロシア軍の対サーマルシートの部分だけ温度が無い状態で、逆に目立ってしまい爆撃されているように見えます。これなら土に埋まった方がマシかも知れません」(量産型カスタム師) アニメの光学迷彩のように現実は上手くいかない。 「だから、UGVです。キャタピラー付の無人地上車両で、食糧・水・弾薬を搭載して輸送する。対戦車地雷を搭載した場合は、自爆攻撃にも使われています。しかし、見つかれば上空からFPV自爆ドローンに潰されています。」(部谷氏) まさに「膠着」である。 「ドローン戦術に限って言えば、国や軍単位で専用のシステムを使って大規模なレーダーなどを対象に行う電子戦というよりも、小隊や個人レベルで行う「電波戦」と言った方がしっくり来るように思います」(量産型カスタム師) 目に見える部分の戦いは理解できた。では、メカ的にはどんな戦いになっているのだろうか? 「最前線にはコードネームのような名前を名乗るエンジニアがいます。例えば、フラッシュこと、セルヒイ・ベスクレストノフ氏。彼はフリーランスのドローンパイロットと同じく軍属ではなく、無線の裏表を知り尽くしたヤバい専門家です。彼は電波に超絶詳しいので、ドローン戦術や妨害装置など電波戦に対してアドバイスしたりしているようです。 これらはもれなく、民生技術になるわけでプロというよりマニア的な人を投入しないと出来ないことです。それもあって日本の軍事専門家やジャーナリストじゃ理解も解説もしきれないのは当然で、中には民生技術なんて簡単だもん!なんてSNSで開き直る人もいるくらい(笑)ようはそれくらい緻密な電子戦というか電波戦をやっているのが現代戦なんですよ」(量産型カスタム師)