ビットコインで生まれる日本の新たな金融・ビジネス・資産運用~サトシ・ナカモトのコンセプトはすでに世界と日本を変えた~【N.Avenue club 2期4回ラウンドテーブル・レポート】
ビットコインマイニングが電気代の削減につながる?
最後に登壇したのは、株式会社アジャイルエナジーX代表取締役社長、立岩健二氏。同社は東京電力パワーグリッドの100%子会社で、利用されていない再生可能エネルギーを有効活用する手段としてビットコインのマイニングを活用しているほか、系統混雑(発電された電気を送配電線や変電所などの系統設備に流す潮流が、設備容量を超えてしまう問題)の緩和に取り組んでいる。 大学時代の専攻は原子力で、東電にはエンジニアとして入社したという立岩氏は、2018年ごろ、大量に電力を消費するビットコインマイニングの存在を知り、これを、東電をはじめとする電力会社・業界が抱える再エネの消費、系統混雑などの問題解決につなげられると考えたといい、その後、数年にわたって上層部を説得、2022年の新会社設立にこぎつけたという。 同社はこれまでに、群馬県と栃木県にコンテナ型のマイニング装置を持ち、PoCを進めてきた。最近では、国内だけでなく海外にも進出。米国テキサス州の非営利法人・パーミアンエネルギー開発研究所との間で、ビットコイン・マイニングとその排熱利用などを活用するための共同研究、開発、デモ、および商業化を目指し、協力に向けた覚書を締結したばかりだという。 立岩氏は、同社が取り組んでいるビジネスについて、「道のりは遠いが、将来の"勝ち筋”は見えている」と力を込めた一方、現状では「設備を増強させるほど赤字が大きくなる」と明かした。そして、各種の制度や分散エネルギー取引市場などが必要で、経産省などに働きかけているとした上で、「将来、市場が生まれるまで、出血を抑えつつ準備に取り組んでいるところだ」と話し、来場者に投資や協業、共創を呼び掛けていた。 法人向け有料コミュニティN.Avenue club 第二期募集中詳細はこちらから メインセッションの後は、来場者がいくつかのテーブルに分かれて、「ビットコインが日本で普及した際、どんなビジネスオポチュニティがある?」とのテーマで、グループディスカッションを行った。 ビットコイン決済について、日本国内での拡大を海外からのインバウンド増加が後押しする可能性や、国際的には、グローバルサウスで大きく伸びる可能性についての指摘があった、また、国内の大手インフラ系企業がビットコイン関連の事業に参入する方法として、バリデータープールの構築を例に挙げる意見が聞かれた。 『N.Avenue club』は毎月、ラウンドテーブルをクローズドな環境で行なっており、そこでは、国内外の先進的な取り組みが紹介されているほか、Web3に携わる会員企業の参加者らによって、最新の情報や議論が盛んに交わされている。事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンに参加を呼び掛けている。 |文:瑞澤 圭|編集:CoinDesk JAPAN編集部|写真:多田圭佑
CoinDesk Japan 編集部