八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)は作詞家・小竹正人にとって「最も仲のいい後輩のひとり」。その真意は…
さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
「八木勇征のこと」
少し前から「八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)って、LDH所属なんだね」といろんな知人にいわれる。子どもから老人まで、テレビをあまり見ないような人にもいわれるので、それだけ彼が活躍して認知されているのだなと、同じ事務所に所属する作詞家である私は、めちゃくちゃ嬉しい。 自分が歌詞を書いて、ずっと見てきた後輩アーティストの活躍を、自分の活躍よりずっと幸せに感じる、そんな歳なんですね、私は。 数年前、勇征に始めて会ったとき、その第一印象は、「なんか変なヤツ」だった。 EXILEHIRO氏、FANTASTICSメンバー、スタッフが初めて一堂に会した食事会で、ひとりだけ目がキョロキョロ泳いでいて、居心地が悪そうで、今思うととんでもなく緊張していたからに違いないのだが、「ひとりだけ挙動不審なヤツがいるなあ」と思ったのが勇征だった。そのとき私と彼はほとんど会話をすることもなかった。 数ヵ月後、初めてFANTASTICSのシングル曲を作詞したので(「Flying Fish」という、私の作詞曲にしては珍しく爽やかで明るい曲)、私はレコーディングスタジオに出向いた。 FANTASTICSのもうひとりのボーカルの中島颯太(初対面から人懐っこくて、ひょうきんで、コミュ力最強)がレコーディングしているとき、私と勇征はスタジオの中にあるソファーに二人きりで並んで座っていた。それまであまり話したことがなかったのに、突然、勇征がたまりかねたように「小竹さん…」と、いきなり私に相談事をしてきた。その相談事の内容が、あまりにも的を得ていて、私も気になっていたことだったので、私たちはもうせきを切ったように話し出した。そして勇征は他にも、心を許しているような人にしか話さないようなことを、次々に私に吐露してくれて、その日から私にとって「似たような価値観を持つ信用できる後輩」になった。 普段はぜったいにそんなことをいわないのに、珍しく勇征が、「今度ドラマに出ることになったので時間があったら見てください」といってきたことがあった。初めて本格的に演技に取り組んだ「美しい彼」である。なんの前情報もなく、ただ勇征が出ているからという理由で見始めた。 最初は、「あ、最近よくあるBLものか」と思ったのだが、見すすめていくうちに、夢中になった。原作が、脚本が、演出が、勇征をはじめとする俳優陣が、あまりにも秀逸だったからである。こんなに文学的で日本らしい名作ドラマを久しぶりに見たと思った。 このドラマは多くの人に支持され、続編や映画も作られ、それと共に八木勇征の快進撃が始まった。私的には納得以外の何ものでもなかった。 勇征との初めてのレコーディング以来、私と彼は定期的に二人で会って、食事をしながら、建設的なこと、どうでもいいこと、他の人には話さないようなことを話す関係に。 ミステリアスなのにあどけないという二面性を持つ勇征は、「国宝級イケメンランキング」で殿堂入りしたあの端正な顔で、飄々と、ものすごく深いことをいろいろ話してくれるので、ついつい私もホントのホンネで話してしまう。彼に対する信頼度はどんどん高まり、気がつけば勇征は最も仲のいい後輩のひとりになっている。 ちなみに、私の意図する「信頼できる最も仲のいい後輩」とは、「老後の私の手助けをしてほしい後輩」の意味合いを含んでいる。次に勇征と食事をするときに、「もしも私に何かあって、私が困ったときは、よろしくお願いいたします」とおおげさに敬語で言ってみよう。私のこの思惑を知ったら勇征はきっと「任せてください!」と大笑いすると思う。