“空き家のまま十数年放置”した実家が「ゴミ屋敷」状態に。人気小説家が直面した“実家じまい”の現実
高齢化社会を反映して、実家の片付けと空き家化が社会問題となって久しい。人口で大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が後期高齢者となり、この問題はさらに深刻になると予想されている。 小説家の高殿円(たかどのまどか)さんも、これに直面した一人。ただでさえ、仕事・子育てに多忙を極めるなか、ごみ屋敷&空き家となった実家の処置に孤軍奮闘。その顛末を著書『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)にまとめ、話題となっている。そんな高殿さんに、“実家じまい”の現実と対策のコツをうかがった。 ⇒【写真】とにかくモノが多い高殿さんの実家
十数年も放置された昭和の家
――実家といってもお父さんの実家、つまりお祖父さんの家が問題となったのですね。 高殿円(以下、高殿):そうなのです。団塊ジュニアの私たちは、祖父・祖母の家が空き家になって困っているという人が多いのです。まだ子供は巣立っておらず、親の介護もあるのに、親のそのまた親の実家のことで、てんてこまいなのは辛すぎます。 自分は兵庫生まれの兵庫育ちで、その実家も兵庫県内にあります。といっても、神戸のような都会でなく、最寄り駅から徒歩30分の何もないエリアです。もともと祖父の家でしたが、かなり前に亡くなり、息子の一人が継ぎました。私の父の兄、つまり伯父にあたる人です。 その伯父もガンで急逝し、以来十数年も家を放置していました。築年数は75年を超えます。
このままでは致命的な近所迷惑に…
――今になって、そのまま放置しておけなくなった理由はなんですか? 高殿:雨漏りがあるなど劣化が進んでいるし、屋根の瓦も台風で隣の家に吹っ飛んでいくおそれがありました。いたずらで放火されたら、もう大変です。存在自体が、近所迷惑になりつつあるなか、京都市が空き家に税金をかけると知りました。その流れは、ほかの自治体にも波及するだろうと。 いずれにしても時が来れば、私がその家を相続することになります。というわけで、対策しなきゃと考えたのです。
土壇場で400万円の買い取りの話が無効に
――それで手始めに、ご当地の不動産仲介業者に依頼したのですね。著書では、首尾よく買い手が現れ、しかも400万円の値がついてと、上々の滑り出しに見えますが、落とし穴があったと……。 高殿:駅から歩いて30分といっても、バスは通っているし、ショッピングモールもできて、若い家族も結構住んでいるエリアです。空き家でも、売れないことはないと考えていました。 買い手の方は、更地にして新たに家を建てるつもりだったそうです。売買契約書を作って、引き渡し日まで決まってから、不動屋さんから連絡がきました。不動屋さんは、「接道義務を満たしていない再建築不可物件」と判明したから、売買できないと言ってきたのです。 法律で、公道に接していない家は、再建築つまり建て替えがダメなのです。これを接道義務といいます。実家の目の前にはちゃんと道路が通っているのですが、事情があってその部分だけが私有地だと、土壇場でわかりました。公道には1ミリも接していないのです。 それで、購入の話は流れてしまいました……。