平日は会社員、休日はバンドマン。自己流スタイルを貫き続けた、the原爆オナニーズTAYLOWと「パンクの本質」
the原爆オナニーズのTAYLOW#1
元「smart」編集長・佐藤誠二朗によるカルチャー・ノンフィクション連載「Don't trust under 50」。有頂天のKERA、ラフィンノーズのチャーミー、ニューロティカのATSUSHI、ザ・スター・クラブのHIKAGEに続いて登場するのはthe原爆オナニーズのTAYLOW。1982年にバンドを結成して42年。いまも変わらず地元・名古屋を拠点に活動を続けるリアルパンクバンドのフロントマン、TAYLOWの貴重なロングインタビューをお届けする。全4回にわたって、TAYLOWの現在、過去、そして未来に迫る。(全4回の1回目) 【写真】ライブ中には見せない柔らかい表情を見せる「パンクの哲学者」TAYLOW
“売れる”ことを想定していないようなバンド名
中学生だった1980年代前半からパンクにのめり込んだ僕にとっては、なじみ深いバンド名だ。愛読していた『宝島』、『DOLL』、『FOOL’S MATE』といった雑誌や、通い詰めていたレコード屋のインディーズコーナーで頻繁に目にしていたからだ。 当時からパンク好きの間ではとても人気があり、知らぬならモグリと言われても仕方がないほど有名ながら、初めて聞いた人は誰もがギョッとする。こうしたカルチャーによほど理解のある人の前以外では、声に出しづらいバンド名であることは間違いない。 ボーカルのTAYLOW(タイロウ)がステージに出てきてそのバンド名を叫ぶと、ライブハウスのフロア前方に殺到した客は拳を突き上げ、歓喜の雄叫びをあげる。 「ウィー・アー・the原爆オナニーズ!!!」 演奏が始まるや、客はモッシュ・ダイブ・サークル・リフトといった激しいパンクノリで呼応。その光景は、バンドが活動を始めた1980年代当時と、ほとんど変わりなく見える。 観客そしてステージ上のバンドメンバーが等しく、約40年分の歳を重ねていること以外は。 並大抵の音楽評論家では到底太刀打ちできぬほど、パンクを知り尽くす男・TAYLOW率いるthe原爆オナニーズ。 当然、奏でるのはゴリゴリのパンクロックである。長い活動歴を通して、絶え間なく熱狂的なファンがついているが、一般層にまで浸透するような親しみやすい音とは言えない。 そもそもバンド名からして、“売れる”ことは想定していないと見るべきだ。 セックス・ピストルズのもじりで付けられたそのショッキングなバンド名について、かつてTAYLOWは「人々がこのバンド名に嫌悪感などの反応を持ち、核・反戦について問題意識を起こさせることができればよい」と述べている。