米軍普天間飛行場の移設問題で注目 辺野古埋め立て承認を検証する「第三者委員会」とは?
沖縄県本島北部の名護市辺野古の透きとおった海。ここは、沖縄県宜野湾市の市街地中心に位置する米軍普天間飛行場の移設先とされている。「辺野古に新基地は造らせない」と宣言して昨年11月に県知事選に当選した翁長雄志知事は、仲井真弘多前知事の埋め立て承認の取り消しか撤回を視野に検証する第三者委員会を1月に立ち上げた。政府が埋め立て本体工事に向けた作業を急ぐ中、第三者委員会が埋め立て承認に法的な瑕疵があったと認定し、翁長知事が承認を取り消すことができるかに注目が集まっている。 委員会は県内の弁護士や環境分野の大学教授ら6人の有識者で構成。知事の私的な諮問機関として、参考の意見を聞くという位置付けだが、「報告を十分尊重する」(翁長知事)としている。検証に当たっては公正中立性を重視し、承認手続きに当たった職員などの話も聞きながら検証する。 普天間問題の発端は20年前にさかのぼる。1995年、海兵隊員ら3人の米兵による少女集団強姦事件が発生した。沖縄の反基地運動が高まり、米軍基地を取り巻く政治的環境は極度に悪化した。 危機感を感じた日米両政府は翌96年に県内に代替のヘリポートを造ることを条件に普天間飛行場の返還に合意。だが国土面積のわずか0・6%しかない沖縄に、日本国内に所在する米軍専用施設の74%が集中する沖縄県内への移設計画は「負担のつけ回しだ」と新たな反発を招いた。 当初の「5年ないし7年以内の返還」(橋本龍太郎元首相)の移設計画はかなわず、普天間問題は日米両政府と沖縄の間に刺さったクギのようなものになっていた。
事態が動いたのは第2次安倍政権が発足した2012年12月。政権交代当時「最低でも県外」と掲げた民主党の姿勢を批判し、安倍晋三首相は「辺野古移設が唯一の解決策だ」と強調。 安倍政権が辺野古移設計画を動かすために重視したのは仲井真弘多前知事との関係性だ。通産官僚出身の仲井真前知事は沖縄の経済振興に特に力を入れており、2006年に1期目の当選を果たした当時は辺野古移設も容認していた。2期目は県外移設を求める民意の高まりを受け「県外移設」に転じたが、政府内では「本音は辺野古移設容認だ」とささやかれた。 菅義偉官房長官は仲井真前知事との非公式の会談を重ね、これまでにない手厚い沖縄振興を約束する。13年12月、都内の病院に腰痛で入院していた仲井真前知事は入院中も菅官房長官と密会。その直後、首相官邸で安倍首相、菅官房長官から今後10年間毎年3000億円台の沖縄振興予算を計上することを約束され、「いい正月が迎えられる」と笑顔を見せて沖縄に戻った。 同年12月27日、知事公舎。記者会見場を埋め尽くした報道陣を前に辺野古移設計画に伴う埋め立て申請を承認したことを表明した。県民に与えた衝撃は大きく、同月に実施された琉球新報と沖縄テレビの世論調査では仲井真知事「不支持」が61%に上った。