「33店舗が閉店」「遂に100店舗を割る…」 それでもイトーヨーカドーが「第2のライフ」には多分なれない理由
このように、本部と現場での足並みを揃えるためには、ある程度双方に対する信頼関係がなくてはならない。 靴やカバンの修理店として知られるミスターミニットの元社長である迫俊亮が、同社の改革をテーマにした『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、本部の指示に対して、現場が全く従わなかったエピソードが書かれている。 現場の人間は、本部の人間から大切にされていると思っておらず、その指示を適当に受け流していたのだ。本部と現場が乖離していたのである(会議室で考えた新たな施策が、現場の手を止めて接客の妨げになることが多かった……という歴史も、背景にはあった)。
迫は「現場は、経営の最高の師匠」と書き、常に現場を見て回り、そこで起こっていることや、行われている工夫を経営にフィードバックさせてきた。それが現場と本部の一体感を生み出し、ミスターミニットの業績回復を支えた。 このように、本部が変わろうとしていても、現場がそれと連動していなければ、全社的な業務改善はありえない。 ヨーカドーも、これまで本部主導でさまざまな改革を行おうとしてきた。2000年代後半には、ディスカウント業態やホームセンター業態など、新しい業態の模索も続けた。また、2011年にはオリジナルの衣服ブランドを立ち上げ、衣料品改革を行おうとした。しかし、どれもパッとしなかった。こうした度重なる改革のどれもがうまくいかないなか、現場の中で、「結局本部の指示なんて……」と思う人がいてもおかしくない。心の底からの連携が難しいのである。
もし、本部と現場がしっかり連携できていれば、レジ列が長くなるだけのDX化に、現場が納得しただろうか……? イトーヨーカドーからは、さまざまなポイントから「消費者不在」「現場不在」が透けて見える。 ■消費者はいるのに、見えていない 以上のような理由から、ヨーカドーの「ライフ化」はなかなかに難しい道だと思える。つまり、①本部による「消費者理解が欠如した、『内側の論理』による政策」、そして、②それによる現場の本部への不信感、だ。