日本一貧乏な観光列車、駅舎になる
9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響で、一時はすべての鉄道がストップした北海道。今では余震も一日に1、2回程度までにおさまり、JR北海道も震源地近くの日高線の一部を除き、ほぼ平常運行に戻った。 そんな中、北海道の南側を走る、道南いさりび鉄道の「清川口(きよかわぐち)」駅舎が、観光列車「ながまれ海峡号」と同じ塗装に塗り替えられ、地元で話題を呼んでいる。
道南いさりび鉄道とは?
道南いさりび鉄道は北海道函館市に本社を置き、五稜郭駅(函館市)と木古内駅(木古内町)の間の37.8キロを結ぶ。2016年3月26日の北海道新幹線開業に伴い、並行在来線となったJR北海道の旧江差線区間を継承、沿線自治体(函館市・北斗市・木古内町)などが設立した第三セクターが運営する鉄道として再出発した。 1980年前後に製造された中古ディーゼル気動車(キハ40形)9両をJRから譲り受け、保有する。うち2両は、地域情報発信列車「ながまれ号」と名付けられ、濃紺の外装に、函館山と津軽海峡の水平線、いか釣り漁船の「いさり火」や「街あかり」、夜空に輝く「北斗星」や「カシオペア」などの星座が象徴的に描かれたデザインだ。この「ながまれ号」は、着脱式のテーブルや背もたれなどを取り付けると、観光列車として運行することも可能で、その際は「ながまれ海峡号」の名称で親しまれる。 道南いさりび鉄道の開業時の車両改造費は、ながまれ号2両を含めた9両合計で3500万円。通常の観光列車では億単位の費用が普通とされ、2017年に運行を開始したJR東日本の豪華寝台列車「TRAIN SUITE 四季島」の総事業費に至っては約100億円と報じられた。まさに桁が違い「日本一貧乏な観光列車」とも呼ばれるゆえんだ。だが大漁旗や手作りの装飾などで車内を飾り、地元の協力で地場食材を活用した料理を振る舞うなど、観光素材を生かした演出が好評。「ながまれ海峡号」のツアーは、鉄道旅の全国コンテスト「鉄旅オブザイヤー2016」で第6回グランプリを受賞する快挙を成し遂げた。