専門家が墓じまいについてアドバイス「墓じまいってご先祖や親族に対して申し訳ないこと?」
『サンキュ!』読者の「実家や親にまつわるお悩み」に、専門家がアドバイスする人気連載。今回は、以前に取り上げた際の反響も大きく、また年末年始に実家で話題に上ることが多い「墓じまい」について拡大版でお届け! 【画像】専門家が墓じまいについてアドバイス「墓じまいってご先祖や親族に対して申し訳ないこと?」
「墓じまい」って、ご先祖や親族に対して申し訳ないこと?
そんなことはありません。「墓じまい」は次世代のことを考えた、むしろ誠実な判断です。 真剣に墓じまいを検討するのは、お墓やご先祖と誠実に向き合い、次世代の負担について考えているからこそ。そうでなければ、むしろお墓を放置してしまいますから。だからこそ、後々もめないためにも自分たちだけで決めず、親や親族などと今後お墓をどうするか、時間をかけて話し合いましょう。
ゆくゆくは……と考えてはいるけど、費用はどのくらいかかるの?
お墓の大きさや納骨数によって異なりますが、お墓1つ約40万円~90万円ほどかかかります。 墓じまいには下のような費用が必要ですが、実際の金額はお墓を開けてみないとわからないのが難しい点。親も知らない親族の遺骨が見つかる場合もあり、遺骨の数が多いとその分お金もかかります。なお、ここに挙げたのはあくまで「墓じまい」のみの費用。遺骨やお墓を引っ越す場合には改葬費用が別途かかります。 【お墓1つにかかる「墓じまい」の費用の相場】
お寺や自治体の手続きはやっぱり大変?
手続きのために必要な書類がいくつかあるので、早めに準備し始めるとスムーズ。 手続きの第一歩は、新しい納骨先の管理者に受入許可証を発行してもらうこと。次に元のお墓がある自治体で改葬許可申請書を入手し、元のお墓の管理者に埋蔵証明を発行してもらいます。この3つの書類を元のお墓がある自治体に提出すると改葬許可証が発行されます。このように手続きには手間と時間がかかるもの。改葬許可証がないと遺骨を移せないので、準備は早めに進めておくとスムーズです。
トータルで期間はどのくらい必要?
●「墓じまい」のおおまかな流れ 1 家族· 親族への相談 「お墓を継ぐ人がいない」「遠くて通えないので家の近くに移したい」など墓じまいの理由を共有。新しい納骨先についても了解を得る。 2 新しい納骨先の確保 お墓を継ぐ人がいるかいないか、立地や費用、将来の供養なども考慮したうえで、新しい納骨先を選んで確保する。 3 行政の手続きいろいろ 「受入許可証」「改葬許可申請書」「埋蔵証明」を揃えて役所に提出。「改葬許可証」を発行してもらう。 ここがちょっと大変 4 墓石の撤去 一般的には開眼供養を行い、その後、石材店に遺骨の取り出しと墓石の撤去工事をしてもらう。 5 新しい納骨先に遺骨を納骨 改葬する場合は、必要なら開眼供養などの法要を行って納骨する。改葬せずに、散骨をする人も。 「墓じまい」1つにつき、半年~1年はかかるとみて。 上のように親族への相談から納骨までそれなりに時間がかかります。墓じまいせず、元のお墓のお寺に「お墓を継ぐ者がいないのでこちらで永代供養はできますか?」と相談するという方法も。お寺側も自分たちが長年供養してきたお墓に思い入れがあるでしょう。お世話になったことへの感謝を忘れず、お互い遺恨を残さない対応を心がけたいですね。 ●「墓じまい」って? お墓を解体・撤去して更地に戻し、お寺など墓地の管理者に使用権を返すことを意味する造語。先祖代々のお墓を維持・管理するのが難しくなってきた人が増え、ここ数年で話題に。 ●「改葬」って? お墓から遺骨を取り出して別の場所に移すことを意味する法律用語。新しい納骨先を探して必要書類を役所に提出。その後、遺骨を取り出して墓石を撤去。次の納骨先に遺骨を納める。 ●「受入許可証」って? 遺骨の引っ越し先となる墓地に納骨先を確保してあることを証明する書類。新しい墓地の管理者に発行してもらう。自治体によっては墓地契約書の写しなどで代用・受理される場合も。 ●「埋蔵証明」って? 遺骨がそのお墓に納骨されていることを証明する書類。墓地や霊園の管理者に発行してもらう。改葬許可申請書の一部に埋蔵証明欄がある場合が多い。 ●「改葬許可申請書」&「改葬許可証」って? 改葬許可申請書は、改葬許可を得るために元のお墓がある自治体に提出する書類。遺骨1体につき1枚必要。改葬許可証は、遺骨を移すために必須の書類。元のお墓がある自治体が発行。 ●「永代供養」って? 家族の代わりにお墓の管理者が遺骨を半永久的に管理してくれるシステムのこと。お墓の継承を前提とせず、毎年のおつとめや支払いがない。費用は1人あたり5万~70万円が相場。 <教えてくれた人> 葬送·終活ソーシャルワーカー All About「葬儀·葬式·お墓」ガイド 吉川美津子さん 大手葬儀社や仏壇・墓石販売店勤務、専門学校で葬儀人材育成に携わるなど、葬送や終活のスペシャリスト。社会福祉士、介護福祉士でもあり、「生き方」「逝き方」に寄り添う福祉職としても活躍中。著書に『お墓の疑問? 解決事典』(つちや書店)など。 参照:『サンキュ!』2025年1月号「どうしよう!実家と親のモンダイ」より。掲載している情報は2024年11月現在のものです。 編集/サンキュ!編集部
サンキュ!編集部