阪神・佐藤輝「もちろん大谷さん見てます」「左肩が体を遠回りしないように」 糸井氏「コンロ打法!金本さんも言ってた」
新春BIG対談が実現だ。阪神・佐藤輝明内野手(25)と、2月の春季キャンプで臨時コーチを務める糸井嘉男SA(43)=デイリースポーツ評論家=が“師弟対談”を行った。佐藤輝が改良に取り組んでいる打撃フォームを実演すると糸井氏は興味津々。超人は後輩のサポートを約束するとともに、今季のタイトル奪取に期待を寄せた。息ぴったりの近大OB2人のトークをじっくりお楽しみください。 【写真】さらなるパワーアップを誓った佐藤輝 バットを手に糸井氏と真剣野球談議 ◇ ◇ -佐藤選手にとってはプロ入り以来、初めて投手出身の監督になった。 糸「そうなの!?僕もピッチャーはないですね。(日本ハム時代は)ヒルマン…何しとったんやろな、あの人(笑)。梨田さんキャッチャー、栗山さんは外野、金本さん外野…。ピッチャー目線でタイガースの打線を見て一番怖いのはテルじゃないですか?」 輝「僕もピッチャーの監督は初めてなので。違った視点からいろいろ聞けたらいいなと思います」 -秋季キャンプの紅白戦では1、2、4番といろんな打順を打った。 糸「なんか1番打ちたいって、自分で言うたて聞いたよ!」 輝「自分で言いましたね」 糸「ハハハ!上位がいいよな!」 輝「そうですね!もうちょっと上(の打順を)打ちたいですね」 糸「2番とか、大谷君とかジャッジ(ヤンキース)も2番打ってるじゃないですか。面白いと思いますよ、テル2番。それか…1番!?」 輝「いやまあ、できるだけ早い打順を任せてもらいたいという意味を込めて、はい」 糸「2番、面白くないですか?いいバッターは。打順が早い方が打席は多くまわってくるから、単純にね。そういう意味では全然ありですね、面白いですね」 -糸井さんは2番を打った経験は。 糸「ありますよ、出だしの頃やからバントとかしてたけど、確かね!」 -佐藤選手も2番の経験はあるが、どっしり2番を打ったことはない。 輝「ないですね、お試しぐらいしかないですね」 -打つならどういう2番になりたいか。 輝「基本は変わらないと思うので、しっかり長打を狙って、より多く塁に出てというところじゃないですかね」 -昨季を振り返ると。 糸「振り返る?」 輝「もうええでしょう(笑)」 糸「去年振り返りたないよ!もう2025年に変わってんねんから!」 輝「ちょっとだけね」 糸「チームはアレンパを逃しましたと、テル的にはどうやった?」 輝「いや、まず優勝できなかったのは、選手の責任やと思うので、もうちょっとできたなというところで。個人的にも、全然物足りないなというので終わってしまいましたね」 糸「何かね、前半戦はボールがあんまり飛ばんように見えたね。フェンスギリギリの打球がめっちゃあったやん。甲子園は浜風もあるけど」 輝「結構ショックでしたね」 糸「ショックでかいねん、甲子園の『ヨッシャ!行った!』と思うのが、ヒットにもなれへんからね。ホームランが凡打になるから、ショックがでかい」 輝「びっくりしますよね。仕方ないですけど」 糸「でも今年巻き返して、一気に3割30発とかね、数字をポン!と上げる可能性を秘めてる男ですから」 輝「もっと頑張りたいですね」 -秋季キャンプでは左翼方向へ打つ打撃に取り組んでいた。 輝「そうですね、もう一回広角にというのは意識して、引っ張りだけじゃ、甲子園じゃ無理なんで、コースなりというか、逆方向にも打てるようにキャンプは課題を持ってやってましたね」 -スタンドにも結構、放り込んでいた。 糸「新聞でも見たけど、スコスコ入れとったね。何発って!あれが阪神のメディアの悪いところやね(笑)」 輝「安芸は球場が狭いので。それもあるんですけど、いい感じには打ててたかなと思います」 糸「キャンプのテーマは?アーロン・ジャッジ(ヤンキース)?フアン・ソト(メッツ)?どうする?」 -糸井さんは昨年MLBの解説もされていた。 糸「そうそう。メジャーと阪神中心でね。面白かった。メジャーの試合めっちゃはよ終わんねん」 輝「あっ、そうなんですか」 糸「ピッチクロックがあるから。『えぇ、もう五回!?』みたいな。その後、日本の野球やったら『まだ五回!?』ってなるんよ」 -佐藤選手の好きなメジャーリーガーは? 輝「みんな見てる。みんなというか、いろんな選手を見たりしてますけどね。もちろん大谷さんも見てます」 糸「いや、すごいね。ちょっと打撃フォーム、大谷君みたいな感じにしとったやん、練習でも。すり足っぽく」 輝「そうっすね。(大谷選手を)見てても、毎年やっぱり変わってるんで、ちょっとずつ。どういう意識というか、何を求めてこういうのにしてるんだろうというのは」 糸「まず、右ピッチャー、左ピッチャーでまるっきり(打席での構えが)ちゃうやろ」 輝「違いますね」 糸「左ピッチャーの時はめっちゃ開くから。まずはボールをしっかり見る。見やすいところを作りたい。死角ができると見にくくなるんで、体が反応できなくなる。見え方っていうのをめっちゃ大事にしてるやん」 輝「そうですね。(立ち位置をホームベースから)バットで測ったりしてましたもんね」 糸「ちょっと(頭の角度を変えるしぐさをして)こうやったり」 輝「あとは、体がすごい柔らかいんだろうなって感じますね」 糸「この辺(胸の辺り)な。それがパワーを生むから」 輝「そうですね」 糸「それが無理やり引くんじゃなしに勝手に引けてる。この柔らかさ」 輝「やっぱり柔らかいと思いますね」 糸「それやろ。風呂上がりの柔軟や。風呂上がり」 輝「こうやって(胸郭辺りを左右に動かして)。回るように」 -そこの柔らかさが飛距離に影響するのか。 糸「捻転やからね。年とってきたら。なくなってくんねん。それを感じた。40(歳)になって」 輝「やっぱりそうなんですね」 糸「なんか取れへんなみたいな、距離が」 輝「回らへんみたいなですか」 糸「そうそうそう。ちょっとウエートやりすぎたんかな(笑)。肩周りに筋肉をつけすぎたんかな。(レッドソックスの吉田)正尚もそこはめっちゃ意識してるから」 輝「そうっすね。ベルトを巻いたりしてますもんね」 糸「そうそう。むっちゃくちゃ気にしてる」 -バットを用意しているので、佐藤選手が今、取り組んでることを実演お願いします。 輝「今は、バットは置いといて、左肩が体を遠回りしないようにしています。バットを引いて、(トップの位置をつくった時に両肩の)ラインから(左肩が)出ないように」 糸「ムズいな、それ」 輝「クルッと回れるようにっていう。(ラインから)出たらバットが遠回りするんで」 糸「だからインコースのボールも詰まるし、外の変化球も泳いじゃう」 輝「そうですね。右肩が支点にいくんじゃなくて、左肩が支点になるように」 糸「大谷君もそうやもんな」 輝「(大谷も)そうやって意識してやったりしてるんかなと思ったり」 糸「おもしろ!それでやりたい、オレももう一回。日々勉強よ、やっぱりね。そういう考え方なんやな、今年は大谷を取り入れてるってこと?」 輝「マネしてるわけじゃないですけど、そうなんじゃないかなと思うと、大谷さんのネクストバッターズサークルの動きはそういうことなんじゃないかとか、いろいろ見えてきますね」 -いい時はそういう動きができてるのか。 輝「そうっすね。悪くなると、左肩がこう(遠回りに)なる傾向があるんで。そこは直そうかなという」 糸「打てそう」 輝「そっちの方がクルッて回れる。クルッて」 糸「コンロの(火を付ける時に回すつまみ)ようにね。重要やな、それ。じゃあ、キャンプにはたくさんググッて行くわ、コンロって!」 輝「ググッて行くわ(笑)?はい。クルッと回れるように」 糸「コンロ打法!でも、金本さんも言ってたからね。コンロみたいにって」 輝「あぁ。聞いたことありますね」 -昨年末はメジャーへの願望も明かした。今年でプロ5年目。年齢を重ねるにつれて、夢は現実的になってきているか。 輝「いや、現実的というか、ぼんやりですけど、行きたいなっていう思いはあるんで」 糸「今は日本人の価値観が上がってるし。活躍したらすごい契約が取れるからね。本当にね」 輝「でも、そのためにしっかりまず日本で活躍するっていうのがもう絶対、必要なんで。まずは優勝を目指して頑張るっていうのは変わらないです」 糸「順調に来てるんちゃう。優勝も経験してるし。徐々に徐々に。順調やと思うよ」 輝「さっき言われた通り、まず今もう一皮も二皮もむけたいと思います」 糸「それを僕がキャンプでむきに行くねん。はがせー!って」 輝「お願いします!」 糸「いや~、楽しみですね!」 -糸井さんが佐藤選手に成績やチームとしての役割で求めるところは。 糸「う~ん、何やろな…タイトルを取ってほしいな!なんでもええから。盗塁王でも、ホームラン王でもね。首位打者でもゴールデングラブでもええし、ベストナインでもええし。それが自信になるし。必然的についてくるもんですけどね、今の活躍を見てて」 輝「そうですね。タイトル、取れれば何でもいいっすね。バッティングでタイトルを取れれば、本当にそれは自信になると思うし」 糸「打点とかもね、やっぱテルはチャンス強いし。チームの勝利に直結する数字やから」 輝「甲子園っていうところでそういうタイトルを取れれば、余計自信になると思うんで。頑張ります」 -年齢も上がってきて、チームの中での役割も変わってくる。 糸「監督がどう考えてるかじゃないですかね。でも、テルはテルらしくやったら間違いなく戦力になるんで。やっぱり一番相手からしたら脅威ですね。ホームラン、一振りでダメージを与えるバッターってなかなか少ないと思うので、まずはそこを追求してほしいなと思いますね」 輝「そうですね。まずはしっかりプレーでしっかり見せてくれっていう意味で。練習とか試合中もそうですけど。まずはそこをしっかり頑張りたいなと思います」 -大山選手がチームに残ったのは大きい。 輝「チームにとってはすごい大きいと思うし。また一緒に優勝を目指して頑張っていきたいなと思います」 -森下選手の頑張りも刺激になっているのか。 輝「もちろん、そうっすね。みんなで刺激し合いながら、いい結果を出せればなと思います」 糸「あとはロハス・ジュニア(※1)を取った方がええやろ(笑)」 輝「ナイスガイだったですね」 -この1月はどう過ごすのか。 輝「もうしっかりこっち(関西)で練習して」 糸「またイチゴ大福、買っていくわ」 輝「お願いします!差し入れ」 -ちなみに、糸井さんが佐藤選手にティー打撃でトスを上げたことはあるか。 糸「夢の中で」 輝「あるんすね(笑)」 糸「あれはいつだったかな。(プロ1年目の)50打席連続無安打ぐらい(※2)の時かな。広島のホテルだったかな…。『テル、オマエそろそろ打てよ』ってティー上げてる夢を見たな」 輝「懐かしい(笑)」 ※1…20年に韓国・KTで本塁打王と打点王を獲得し、21年に阪神入り。2年間で打率・220、17本塁打、48打点に終わって22年限りで退団。24年はKTに復帰し、全144試合に出場して打率・329、32本塁打、112打点を記録した。 ※2…新人だった21年に8月下旬から59打席連続ノーヒット。ルーキーイヤーに投手を含めたセ・リーグワーストを更新した。 ◆佐藤 輝明(さとう・てるあき)1999年3月13日生まれ、25歳。兵庫県出身。187センチ、96キロ。右投げ左打ち。内野手。背番号8。仁川学院高では甲子園出場なし。近大では関西学生野球リーグ最多の通算14本塁打を放ち、2020年度ドラフト1位で阪神入団。プロ1年目の21年に歴代新人左打者最多の24本塁打を記録。昨季は球団史上初の新人から4年連続で2桁本塁打&100安打を達成。23年アジアプロ野球チャンピオンシップ日本代表。 ◆糸井 嘉男(いとい・よしお)1981年7月31日生まれ、43歳。京都府出身。宮津高から近大を経て、2003年度ドラフト自由枠で投手として日本ハム入団。06年に野手転向。07年3月27日・オリックス戦(京セラドーム)でプロ初出場初先発(8番・左翼)。13年オリックス移籍。17年FAで阪神移籍。首位打者・盗塁王各1回、最高出塁率3回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞7回。13年WBC日本代表。