あと100日切った大阪万博 中身の発信で機運高めよ 書く書く鹿じか
1年以上も前になるが、大阪・関西万博の前売り券の発売が始まったというので、早割を購入しようと公式ウェブサイトをのぞいた。すべて電子チケットで、まず「万博ⅠD」を登録し、事前に入場日を予約する必要があるという。電車も券売機で切符を買って乗るアナクロにしてアナログ人間である。面倒なので途中でやめた。 万博に最も関心があるのは、1970(昭和45)年の大阪万博に行った世代ではないか。小学生だったとしても60代半ばになる。空前の6422万人がつめかけた世紀のイベントをもう一度体験したい。そんな思いを、前売り券の購入方法のわかりにくさで二の足を踏ませてどうする。 案の定、前売り券は目標の1400万枚の半分余りしか売れておらず、ほとんどが企業のまとめ買いで、個人は少ない。このため紙チケットをコンビニや旅行会社などで売り出したが、僕はまだ購入していない。 大阪・関西万博は開幕まで100日を切った。カウントダウンが始まれば盛り上がるものだが、指折り数えるワクワク感はない。主催する日本国際博覧会協会に苦言を呈したい。 予約制は混雑を避け、人気のパビリオンにも行列なしで入場できるようにするためというのだが、70年大阪万博ではアメリカ館の「月の石」を見ようと長蛇の列ができ、それが呼び水になった。行列は人気の証しなのである。 期間中の来場者数を2820万人と予想し、交通混雑緩和のため企業などに時差出勤を呼び掛けているが、はたしてそんなに人が来るのだろうか。 会場建設費は資材の高騰などで当初計画の2倍近い最大2350億円に上振れし、運営費も1・4倍の1160億円に引き上げられ、さらに海外からの要人が多いとして警備費が55億円増額された。見通しの甘さは否めない。 一番の問題は、どんな展示があり、どのような体験ができるのか、肝心の中身がいまだに一部しか明らかにされないことだ。万博は未来をプレゼンテーションする舞台として人気を博してきた。当初、「空飛ぶクルマ」が目玉とされたが、商用運航を見送り、デモ飛行だけになった。ドローンはウクライナの戦争で破壊兵器として使用されている。未来には光と影があり、夢と希望ばかりではない。 黒川信雄記者がこんなコラムを書いていた。ローマ教皇庁(バチカン)と共同出展するイタリアのパビリオンが報道陣に公開され、日本初公開の2世紀の大理石彫刻「ファルネーゼのアトラス」と、バチカン美術館所蔵のカラバッジョの代表作「キリストの埋葬」が常設展示されるというのだ。ぜひ見たい。
こんな情報が次々に出てくれば、万博の機運は盛り上がる。あと3カ月、開幕まで時間はまだある。(元特別記者 鹿間孝一)