ウクライナ侵攻を経済発展の好機に 避難民を労働力に取り込むポーランドのサバイバル術
ロシアとの戦争が続くウクライナと国境を接するポーランド。2022年2月の開戦直後には数百万人のウクライナ避難民が流れ込み、現在も100万人弱が生活を続けており、ポーランドでは避難民への支援に伴う負担が避けられない状況だ。一方で、避難民を貴重な労働力として取り込んでいるほか、戦後の復興需要を見込んだ海外企業からの関心も寄せられている。戦火拡大の危険にさらされつつも、したたかに経済発展を目指すポーランドの現状を現地で取材した。 【写真】家族とともにポーランドに避難しているマリアさん ■受け入れは当然、人口倍増の町も 「工場で働く約1800人のうち、約200人がウクライナ人だ。戦争前から勤務していた人もいるが、大半は開戦以降の避難民で、彼らはとてもよく働いてくれる」 ポーランド東部ポズナニ郊外にあるチョコレート工場の生産部門責任者は、避難民らの仕事をこう評価した。さらに「多くのポーランド人が英国やドイツなどで働いている。ウクライナ人の受け入れは特別なことではない」と強調した。 避難民が労働力として重宝される現状はポーランド各地で聞くことができた。 中部ウッチ近郊の町では避難民を大量に受け入れた結果、戦前と比べて人口が倍増したという。この町は地域の交通の要衝で物流拠点の整備が進められていたが、人手不足が課題だった。その不足を避難民が埋めているというのだ。 ウクライナとの国境沿いにあるルブリン県の商工会議所関係者は、約40万人のウクライナ人が建設や飲食などの業務に従事していると説明した。 ■100万人が居住、数々の支援 ポーランドは国土の東側をウクライナと接し、同国の首都キーウからは鉄道なら半日程度でポーランドの首都ワルシャワに来ることができる。ロシアによる全面侵攻でウクライナからは数百万人の避難民がポーランドを経由して国外に脱出したが、戦争開始から3年弱がたった現在も約100万人の避難民がポーランド国内で暮らしていると推定される。 ポズナニで避難民の支援活動を行う国際組織「カリタス」の事務所を訪れる機会があった。対応してくれたマリアさんも避難民で、家族とともにポーランドに避難してきたという。