ウクライナ侵攻を経済発展の好機に 避難民を労働力に取り込むポーランドのサバイバル術
世界銀行は2月、ウクライナの復興のために今後10年間で4860億ドル(約74兆円)が必要になるとの試算をまとめた。実際にどこまで支援が行われるかは不透明だが、巨額の資金が投じられる可能性は高い。それらの需要を取り込む上でも、ポーランドは各国の企業の注目が高まる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)のワルシャワ事務所によると、危機勃発後も欧米企業の進出は堅調に続く。日本企業からも、ウクライナへの物流ルートに関する問い合わせが多数寄せられているという。ポーランド経済は23年は低成長に陥ったが、24年は3%の国内総生産(GDP)成長率が見込まれる。
ただリスクも残る。ポーランドでは22年11月にミサイルの一部が自国領内に着弾し、死者が発生する事態も起きた。今後停戦が実現し、ウクライナの復興が進むことが予想される一方、戦闘が拡大するような事態になれば、企業進出の妨げになるのは必至だ。
米国のトランプ次期大統領は、来年1月の就任後24時間以内にロシアとウクライナの戦闘を終わらせると主張したが、実際に思惑通りに早期停戦を実現できるかは不透明だ。ポーランドはリスクとチャンスを見定めながら、隣国での戦争勃発という危機を乗り切ろうとしている。(黒川信雄)