ウクライナ侵攻を経済発展の好機に 避難民を労働力に取り込むポーランドのサバイバル術
マリアさんによると、ポーランド政府は子供や体が不自由な人がいる避難民の家族への金銭面での支援や、彼らを受け入れてくれるポーランド人家庭への支援のほか、雇用を提供する企業にも補助金を提供しているという。カリタスは、そのような申請作業の手伝いや語学の習得支援、企業と避難民のマッチングなどを行っている。
■次は〝わが身〟
このような支援はポーランドにとって財政的な負担になるが、避難民の流入は慢性的に不足する国内の労働力を得られるメリットがある。
旧社会主義国のポーランドは、体制転換後は多くの人々が職を求めて他の欧州諸国に流出したが、04年の欧州連合(EU)加盟により移動はさらに容易になった。そのような中、不足する労働力を埋め合わせているのが、ウクライナやベラルーシなど旧ソ連諸国からの労働力の流入とされる。
ロシアによるウクライナ侵攻は、働き盛りの年齢層のウクライナ人男性が国外に出られなくなる側面がある一方で、避難民らは貴重な労働力となっている。取材に応じたウッチの市民は「ポーランドにとって最も大きな問題は、彼らが入ってくることではなく、むしろ停戦後に帰国して再び労働者不足に陥ることだ」と語った。
ウクライナ人が大量に流入することに不満を持つポーランド人がいないわけではない。前出のマリアさんは「避難民の流入で仕事が見つからないと批判する人もいる」と説明する。ポーランド人よりも安い給与で雇えることから積極的に雇用しようとする企業もあるという。
ただ、「多くのポーランド人は、ロシアに攻め込まれたウクライナを見て〝次はわが身〟と感じている。だからウクライナ人に強く同情する人が少なくない」とした。
リスクとチャンス見極め
ウクライナ支援はポーランドに他の経済効果をもたらす可能性もある。停戦が実現した後のウクライナの復興支援に関わる需要の取り込みだ。
陸路で結ばれ、EU圏内のポーランドは支援のハブ(拠点)になることが確実視されている。国際機関や企業がウクライナで事業を展開する場合、ポーランドにも拠点を設ける可能性がある。