「逆ギレ戒厳令」不発で尹錫悦大統領はもはや詰み…次は「反日モンスター」
「日韓冬の時代」の再来
ところが、李在明政権になれば、再び「悪夢の文在寅時代」が復活するのは確実だ。李代表の「反日ぶり」は、日本から見れば常軌を逸しているからだ。 過去の植民地支配(1910年~1945年)の問題は、1965年の日韓国交正常化で交わされた日韓基本条約によって終了したというのが、日本の立場だ。ところが李在明氏は、この条約は、軍事クーデターによって韓国を掌握した「違法政権」(朴正煕政権)によって交わされたものであり、両国の戦後処理は終わっていないと主張している。 実際、京畿(キョンギ)道知事時代には、「親日残滓(ざんし)清算プロジェクト」なるものまで立ち上げた。首都ソウルを取り囲む京畿道から、「親日的なもの」を徹底的に除去していくという運動だ。 石破茂首相は、11月29日の所信表明演説で、「韓国の尹錫悦大統領とも、来年、国交正常化60周年を迎える中、首脳会談も頻繁に行い、日韓関係を大いに飛躍させる年にしようということで一致しました」と力説した。 だが、来年の日韓国交正常化60周年に待ち受けるのは、おそらくは「暗澹(あんたん)たる日韓関係」だろう。「日韓冬の時代」の再来である。 そんな中で、石破首相が望む「来年1月の訪韓」など、実現するはずもない。石破首相は、「日韓蜜月時代」を演出した岸田前首相と比べて、つくづくツキのない首相と思う。
東アジアの国際情勢にも影響
逆に、東アジアで、「尹大統領のクーデター未遂」に快哉(かいさい)を叫んでいると思われるリーダーが二人いる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と、中国の習近平国家主席だ。 金正恩委員長は、武器売却や兵士派遣でウラジーミル・プーチン大統領が多額の外貨を与えてくれる「ロシア特需」、3度も首脳会談を行ったドナルド・トランプ米大統領という「盟友の復活」に続いて、またもや「幸運」が飛び込んできたと、ほくそ笑んでいるだろう。何せ「民族の逆賊」(尹大統領)が退いて、「同盟より同胞」重視の李在明氏が、半年後にはトップに立つ気運が高まってきたのだから。上記のように、戒厳令布告の理由にも、尹大統領は北朝鮮問題を挙げていたのだ。 同様に習近平主席も、尹政権による「日米韓の揺るぎない絆(きずな)」に切歯扼腕(せっしやくわん)していただけに、「朗報」と捉えているだろう。 あまりにも稚拙な「大統領のクーデター未遂」は、韓国国内はもとより、東アジアの国際情勢をも一変させるものとなってしまった--。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)