「喫煙所が少ない」大阪市で対応を迫られる飲食店…みんなが気持ちよく過ごせる街づくりとは
市内全域が「禁煙」に
「食い倒れ」の中心地・ミナミや人気急上昇のグルメタウン・福島、焼肉の激戦区・鶴橋――。大阪市内には繁華街が点在し、「天下の台所」の異名に相違ない活気を見せている。近年のインバウンド需要に加えて、2025年には大阪万博が開催され、より一層の盛り上がりに期待がかかるところだ。 【写真】大阪・堂島公園にあるコンテナ型の喫煙所 大阪の中心街を歩いてみよう。梅田駅北側、通称「うめきた」の再開発事業「グラングリーン大阪」をはじめ、万博開催に向けてさまざまなプロジェクトが動き、急ピッチで工事が勧められている。終日通勤客と観光客が交差する南海難波駅の「なんば広場」もリニューアルが施されて久しい。 なんば広場には閉鎖型の喫煙所が設置されている。かつての開放型の喫煙所と違い、煙は脱臭されて外に排出される仕組みだ。周辺に吸い殻や空き缶がポイ捨てされている形跡もなく、日中は多くの利用者が続々と立ち寄り、出入り口を譲り合っていた。 大阪には、喫煙所が少ないーー。ある利用者に話を聞くと、そう嘆息した。現在、大阪市内ではなんばをはじめ6地区が路上喫煙禁止区域に指定されているが、2025年1月27日より改正条例を施行し、路上喫煙禁止地域が市内全域に拡大される(過料1000円)。 また、同年4月からは府の条例改正で客席面積30平方メートル以下などの条件を満たした店を除き、原則屋内禁煙となる(罰則あり)。これは万博の開催を見据えての施策だという。 大阪に限った話ではないが、望まない受動喫煙防止の観点からも、喫煙者と非喫煙者がそれぞれ気持ちよく過ごせるための街づくりは急務だ。だがそれにともなって、大阪で飲食店を営む個人経営者は対応に迫られることになる。
外でも中でも吸えない
飲食店経営者約2500人が加盟する大阪府飲食業生活衛生同業組合(おおさか飲食)の中村実事務局長は、彼らの声をこう代弁する。 「飲食店経営者にとっては、たばこを吸わない人も、吸う人も大切なお客さんです。ただでさえこれまで飲食店は受動喫煙防止のために、大阪府や市の規制に沿ってさまざまな施策を講じてきました。たばこを吸うから、吸わないからという理由でお客さんを断るようになっては心苦しい」 喫煙専用室の設置や禁煙化に伴う改装などに対する補助はあるものの、個人経営の店の多くは喫煙ブースを設置するほどの余裕がなく、席数を減らしても売り上げが補償されるわけではない。 「店内禁煙にするために、店の入り口でたばこを吸ってもらっているケースも多いわけです。それを『路上喫煙』とみなされてペナルティが課されたら、お客さん側もやりきれないと思います」(中村事務局長) 外でも中でもたばこを吸うことができないーー。路上喫煙禁止区域を拡大するにあたり、市は1月27日までに140ヵ所の指定喫煙所を「確実に確保していく」としている。また横山英幸大阪市長は「万博開幕までに300ヵ所を目標の確保ができる見込み」としているが、前述のとおり大阪は喫煙所がもともと多いわけではない。 たとえば東京・中央区は面積約10平方キロメートルに対して63ヵ所の公営・民間喫煙所が設置されている。大阪市全域は約223平方キロメートルあり、当然単純比較はできないものの、そのようなモデルケースがありながら「そもそも140ヵ所で足りるのか?」という声が大阪の街の人々から挙がるのも致し方ない。 望まない受動喫煙防止策が講じられることに異を唱える人は少ない。ただタイムリミットやノルマをクリアするためだけに、いたずらに数を追い求めたり必要以上の規制を強いたりするのはおかしいのではないか、と感じる人が多いのが現状だ。