「喫煙所が少ない」大阪市で対応を迫られる飲食店…みんなが気持ちよく過ごせる街づくりとは
「2駅先までたばこを吸う」日が来る?
先述したなんば広場からおよそ3km北上した淀屋橋駅・堂島公園までの御堂筋は、大阪の目抜き通りだ。看板に記された喫煙所は、三休橋交差点を含め3ヵ所しかない。指定喫煙所は市が示すように増えてきているが、改正条例の施行を目前にして周知が徹底されているとは言い難い。 「いつかお客さんに、『たばこを吸うには2駅先の指定喫煙所まで行ってください』と言わなければならない飲食店が出てくるかもしれません。食文化の街と言っても、飲食店のほとんどは街に根ざした零細企業。規制によってその賑わいが損なわれるのは悲しいことです」(中村事務局長) 軒を連ねる中小の個人飲食店は、大阪という街のダイナミズムを生み出してきた。材料費の値上げなどで飲食店に冬の時代が到来しているなか、さらに厳しい判断を強いられることになる。 この現状に声をあげるのは、飲食店だけではない。今年11月、大阪市内のたばこ店店主が大阪市議会長宛に提出した陳情書には、次のように記されている。 〈今、たばこ屋をつづけているのはお金もうけのためではない。町の皆さんに貢献するためだ。灰皿をどけることは全くかまわない。身体のことを考えるとその方が楽でもある。 ただ、大都会ではなくとも我が町にも喫煙所を必要としている人がいることを忘れないであげてほしい。一律で禁止するなら一律で皆が不便なく吸えるように喫煙所をつくってあげてほしい〉 また別の大阪市民の陳情書には、喫煙所がないことによる諸問題や「喫煙格差」を懸念するような意見があった。 〈隠れて吸わざるを得ない喫煙者が増えて、思わぬ場所でのゴミや火事の問題も心配です。 喫煙所があればいいのですが、繁華街ばかりに作られないかも心配です。都会にいる人は快適にたばこを吸えて、そうでない人はたばこを吸うのに30分とか歩かなくてはいけないとなるとあまりに不公平ではないかと思います〉 喫煙所の過剰な混雑が、マナーの悪化や望まない受動喫煙を助長する可能性も懸念される。全面的な「禁煙」よりも、より建設的な「分煙」の形を模索するほうが、たばこを吸う人も吸わない人も、それぞれゆとりを持って暮らせる街づくりに近づくのではないか。
現代ビジネス編集部