女子走高跳の髙橋渚にパリ五輪代表入りの可能性、日本人11年ぶりの1m90台が目前に【日本選手権プレビュー】
ここまで安定して自己記録に近い高さを跳ぶ選手は、久しぶりに現れた気がする。安定している理由を醍醐奈緒美コーチは「内容にこだわっているから」だと説明する。「もちろん記録が出ればうれしいのですが、そこに目指してきた内容があるかのかどうか、やってきたことを上手く体現することができているか、にこだわってきました。そこが本当に上手くいき始めたのが今年です」 室内で1月に1m84を跳ぶと、2月にも1m86と自己記録を1cm更新した。2月にはニュージーランドで1m87、5月の静岡国際では1m88と自己記録を伸ばし続けている。6月のニューヨークシティ・グランプリは気象条件に恵まれなかったが、世界陸上決勝進出選手たちに混じって1m87の2位と健闘した。 「ブレない選手なんです。試合においても、練習においても」と醍醐奈緒美コーチ。「本人の考え方がしっかりしてきて、行動が変わってきています。海外でも小さな大会でも、自分の動きに集中できるようになったことが安定している理由でしょうね。心のモチベーションがあるからだと思います」 髙橋は自分の考えが揺れ動いていた頃に、「本当に情けない試合をしていたから」と成長の背景を話す。「今は世界の舞台で戦いたい、という強い気持ちがあります。そこに到達していない段階でブレていたら、目標に手が届くわけがありません。もう、情けない試合は絶対にしたくない、と思っています」 外国の試合で周りの状況がわからなくなっても、慌てずに対処できるようになった。「海外ということを楽しむように意識しています。周りを落ち着いて見たら状況はだいたいわかるので、あとは自分のやるべきことに集中できます」最初から海外試合や大舞台に強い選手もいるが、髙橋は気持ちの持ち方を工夫することで力を発揮できるようになった選手と言っていい。 ■前戦のニューヨークで1m90に手応え 競技的な部分でいえば、ニューヨークシティの試合内容が「1m90以上の力がある」(醍醐奈緒美コーチ)ことを示していた。