女子走高跳の髙橋渚にパリ五輪代表入りの可能性、日本人11年ぶりの1m90台が目前に【日本選手権プレビュー】
2月のニュージーランドまでは、練習の大半を助走を安定させることを目的に行った。助走最後の局面で体を内傾させるための走りにフォーカスしたのだ。帰国後に踏み切り位置やバーに向かう角度など、踏み切り技術についても取り組み始めた。跳躍を見た醍醐直幸先生からアドバイスをもらい、そのために必要なトレーニングを醍醐奈緒美コーチが考案することもある。 静岡国際で踏み切り技術を試す予定だったが、「助走が走れすぎた」(醍醐奈緒美コーチ)ために、試すことができなかった。しかしニューヨークシティ・グランプリまで1か月の期間があり、助走を踏み切りにうまくつなげられる兆候が現れ始めた。 「アップ中は雨が降りましたし、ピットは(左脚踏み切りの)渚には向かい風でしたが、向かい風と感じさせないくらい助走もよくて、踏み切りとも噛み合っていました。1m84まではそこまで良くなかったんですが、成功した1m84の3回目から修正でき始めて、1m87を2回目で成功した跳躍は1m90が跳べる内容でした」 1m90は残念ながら、「1m87が良すぎた」ためにクリアできなかったが、一度跳んだ高さは安定して跳ぶことができるのが髙橋という選手である。踏み切り位置は想定よりバーに近かったが、それでもバーに向かう角度は正しく踏み切ることができた。日本選手権の条件が多少悪くても、1m90をクリアする準備が整った。 髙橋自身、日本選手権を良い状態で迎えられると感じている。「ここまで良い流れできて、やってきた過程が自信になっています。それをどこまで出せるのか、緊張もありますがワクワクも大きいです。一番合わせたい日本選手権です」 最初に紹介したように、一番印象に残っている日本選手権は1m80を初めて跳んだ大学1年時の大会だった。今年初めて1m90を跳ぶことができたら、また一段上のステージに上がった大会と位置付けられる。髙橋にとってまた違った意味で、さらに強く印象に残る日本選手権となるのではないか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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