名伯楽・内田順三も驚いた「毎日素振り1000回」完遂。才能よりも努力で大成した選手とは?
「(くふうハヤテは)一からではなくて、ゼロからスタートしたチームです。選手は、主に社会人や独立リーグである程度成績を収めたもののドラフト指名されなかった選手や、NPB球団を解雇された選手がほとんどです。実績のある元NPB選手はもう一度チャンスを掴もうと来ています。高卒の新人選手もふたり(大生虎史〈おおばえ・こうし〉と山田 門〈やまだ・りゅう〉)いますが、『作る』という育成の部分は、まだまだ改善していかなければいけないことも多く、手探りの状態です。 球団としては『育成・再生、そして勝つ』というテーマを掲げていますが、育成の部分にしても、まだまだそこまで陣容が揃っていないのが実情です。今はそれよりも、試合のできる状態の選手を集めている最中なので、すべてにおいてこれからだと思います」 NPB所属球団とはいえ環境面も選手の待遇も独立リーグと大きく変わらず、チーム力も既存のNPB12球団からは大きく引き離されている。しかし前述したように、選手の覚悟は、既存球団のファーム選手よりも強いと内田コーチは話した。ハングリー精神の塊のような選手が揃い切磋琢磨している。それが現時点での、くふうハヤテというチームの最大の特徴、魅力かもしれない。 「練習でも試合でも常に一生懸命で、手を抜くような選手はひとりもいない。逆に少し身体を休ませることも必要ではないか思うほどです。NPBでドラフト指名されたい、(NPB12球団に)戻りたいという熱意と願望が強いので、そのあたりはうまく取り組めるように、休むことの大切さも助言できたらなと思っています」 人生そのものが野球と言えるような内田コーチに、どんな指導者でありたいかと聞いた。すると、「自分で話すのはおこがましいですが」と前置きした上で、「選手にとって余韻の残るコーチでありたい」と答えた。 「『内田にむちゃくちゃバットを振らされた』と思っていていた選手が1軍で活躍できるようになったとき、『あの練習があったからこそ、今の自分がいる』と思ってもらえるような、おこがましいですが、そんな余韻の残るような指導を、これからも目指したいと思います」 シーズン中は月に10日間程度、チームを巡回するという契約で打撃アドバイザーに就任した内田コーチだが、契約条件以上に時間と情熱を注ぎ、遠征にも帯同するなど、孫のような年齢の若い選手たちと濃密に向き合っている。 「今は一からではなくゼロから教えること、指導の仕方はどうすれば良いか、私にとっても初めての経験なので、新鮮な気持ちで勉強しています」 野球への情熱は広島、巨人時代と変わらず、いやそれ以上に高まっているように思えた。 (つづく) ●内田順三(うちだ・じゅんぞう) 1947年生まれ、静岡県出身。東海大一高、駒澤大を経て1969年ドラフト8位でヤクルト入団。のち日本ハム、広島に移籍して82年、35歳で現役引退。同時に広島2軍打撃コーチ補佐に就任すると、以降は広島と巨人を行き来しながら37年間、一度も途切れることなく2019年シーズンまでNPBの指導者として活躍した 取材・文・撮影/会津泰成