1兆円もの税金をつぎ込んだ半導体会社「ラピダス」が、大失敗しそうな「3つの理由」
「日の丸半導体の復活」――錦の御旗を掲げた経済産業省によって、約1兆円もの税金が新会社「ラピダス」に注がれている。しかし北海道千歳市に工場を建設中の同社は、大政奉還後に新政府軍に抵抗した旧幕府軍になぞらえて、「半導体の五稜郭」とも呼ばれる。 【一覧】5年後に「生き残る会社」「消える会社」…371社を実名公開! 「最先端である2ナノのロジック半導体の量産」を目標に掲げるラピダスだが、旧幕府軍と同じく、その夢が実現できるとはとても考えられない。前編記事『99%が税金の半導体会社「ラピダス」はもはや国有企業…そのウラにある経産省の「思惑」』に続き、その理由を解説していこう。
合計145歳の経営者コンビ
取材を拒まれたので、一方的にラピダスへの疑問を誌上でぶつけてみたい。「2ナノ半導体の量産」については多くの専門家が、3つの点から「不安」を指摘している。まず経営者だ。 ラピダスの会長には発足のきっかけを作った東氏が就任した。東氏は現在74歳。1996年から2016年まで東京エレクトロンの社長、会長を歴任した大物経営者だが、国際基督教大学出身の営業マンで、技術者ではない。2019年には相談役からも退いた。現役の経営者ではない。 「技術がわかる経営者」として東氏が誘ったのが小池淳義氏。東氏の3つ年下の1952年生まれで、早稲田大学大学院理工学研究科を修了後、日立製作所に入社し、半導体部門の技術開発に従事した。 2002年に日立と台湾の大手ファウンドリ(半導体の生産専門会社)UMCとの合弁会社、トレセンティテクノロジーズの社長に就任したが、日本にファウンドリを定着させるには至らなかった。2005年にロジック半導体の国策会社・ルネサステクノロジの技師長、2006年にはサンディスク(現ウエスタンデジタル)日本法人社長に就任している。 ファウンドリとロジック半導体というラピダス経営の必要条件を満たした人物ではあるが、御年71歳。「1年離れれば浦島太郎」といわれるほど技術革新が速い半導体業界で、70代コンビが、「最先端の半導体を量産して世界のトップに躍り出る」という野心的なプロジェクトを率いるには無理がある。