1兆円もの税金をつぎ込んだ半導体会社「ラピダス」が、大失敗しそうな「3つの理由」
顧客がいない!?
3つ目の不安は、仮に2ナノメートル半導体の量産に成功したとして、それを使う顧客がいるかどうかである。前出の大山氏はこう指摘する。 「自らは設計せず、生産に特化するファウンドリには、ティーチャー・カスタマー(教師役の顧客)が不可欠です。TSMCにとってはアップル、サムスンのファウンドリは自社のスマホ部門がそれに当たります。 最先端の製品を手がけるティーチャー・カスタマーは、何年先にどんな半導体が必要になるかをファウンドリに教え、ファウンドリが量産した半導体を大量に買い付けます。闇雲に2ナノを作っても、買い手が現れなければビジネスになりません」 経営者は「退役兵」とも言える70代で、現場も経験不足。量産はおぼつかないうえ、仮に成功しても買い手が見当たらない。そんなプロジェクトに1兆円もの血税を投じるのは、「経済安全保障」の名の下に、半導体産業が政官利権になりつつあるからだ。 「週刊現代」2024年6月8・15日合併号より さらに関連記事『99%が税金の半導体会社「ラピダス」はもはや国有企業…そのウラにある経産省の「思惑」』では、ラピダスの工場建設でバブルに沸く千歳市の様子をレポートしている。
大西 康之(ジャーナリスト)/週刊現代(講談社)