名将から言われた「急に無理だぞ」から6年、東海大浦安の指揮官が貫く、徹底した本気の指導
我慢強さと責任感を携えて
すると瀬戸監督は、「『何とか食らいついてでも』とか『腕が折れてでもやるんだ』みたいな我慢強い気持ちが難しいかもしれない」と新チームの課題を語ったうえで、千葉黎明との一戦を振り返った。 「6回までは同点で食らいつきましたけど、勝ち越すことが出来ない。うちにも勝てるチャンスがあったのに、逆にリードを許すことになりました。じゃあ何が違うのかと思ったとき、粘り強さかなと思ったんです。勝負所でこちらが粘れずに力尽きてしまったり、逆に相手は粘り強い守備で流れをたぐり寄せたりと。だから、そこが弱い選手が多いかもしれないです」 千葉黎明戦を戦っていた高橋も「我慢強さとかが、千葉黎明の方が上回っていたことを体験出来た。そのあたりもしっかりやらないといけない」と感じたと話し、重要性を再確認しているようだった。 そのおかげもあってか、「練習試合でも相手のミスから逆転するなどスタート時より粘り強い姿勢が出来てきた」と成長を感じている。矢澤主将も「粘り強さや勝ち切るとか、『それでいいのか』と仲間たちを鼓舞する声掛けが冬場はできている」とチームの変化を感じている。
だがその一方で、矢澤主将はもう1つの課題があることを指摘する。 「真面目な仲間たちなので、指示を出せば動いてくれますけど、自分のことで精一杯になってしまって、周りが見えなくなってしまう。だから試合でも相手の嫌がるプレーを、もっとできたんじゃないかと感じるところもあります」 瀬戸監督も同様に、「指示を待ってしまう選手が増えてしまう」という課題を感じているという。ただ選手それぞれに責任感を与えることは、「特に難しい」と瀬戸監督が話すように、粘り強さを生み出すことと同じくらい容易なことではない。だからこそ、今年のチームは初めて「内野のリーダーなど、主将以外で各カテゴリーに隊長みたいな形で役割を与えて、責任をもって全員で協力して動けるチーム運営にしています」とこれまでになかった取り組みに着手した。 実際、矢澤主将は統括する立場としてチームをまとめるが、高橋はいくつかあるカテゴリーの1つ、内野のリーダーとしてチームを引っ張っている。まだ道半ばだが、「隊長たちは確認のために質問に来ることが増えているので、責任を感じながら動いていると思います」と瀬戸監督は新たな取り組みに手ごたえを感じている。 高橋も「そういったことをやったことがなくて心配でしたが、自分が守備だけでも引っ張らないといけない自覚が芽生えて、練習でもミーティングで発言することが増えました」と瀬戸監督の狙い通りの状況になりつつあるようだ。 とはいえ、シーズンを迎えると主力組と控え組が分かれて動くことも増える。3学年で大所帯となる。「ちょっと楽しみな部分ですね」と瀬戸監督は話したが、矢澤主将も同じだった。 「今後、全員で発信したり、自発的な行動が増えたりするといいなと思っています。それでチームを自分が、全員が支えて鼓舞できるようにしたいです。そして春、夏と勝ち上がって、活躍できるようにしたいです」
4月からは7年目を迎える瀬戸監督だが、実は就任が決まった段階で、東海大相模時代の恩師の1人、門馬敬治監督にあいさつしたという。そのときは「急には無理だぞ」といわれたが、「いや、頑張ります」と返事をしたそうだ。 だが実際は、様々な経験をしながら地道な積み重ねを6年間続けてチームの土台を作ってきた。ただその分、がっちりとした土台が出来た。その上に粘り強さ、責任感を積み上げたのが今年の東海大浦安の強さになるだろう。 すでに、「上位に割って入れるだけの力はあると思っている」と瀬戸監督は自信を持っている。その強さがどこまで通じるか。春以降の戦いも注目したい。