中国産の高級ワイン、その実力は? 濃厚な赤には「ボルドー級」の評価も
■「富裕層増」「仏資本進出」「多様な気候」が三大要因
高級ワイン産地として台頭してきた主な要因は3つある。まず、中国の富裕層の増加でワイン人口が増えたこと。中でもフランス・ボルドーのフルボディータイプの赤ワインは大人気で、まさしく爆買いが起き、一時、ボルドーワインの値段の高騰を招いたほど。高級フランスワインを日常的に味わうことで、愛好家の舌も肥えていった。 すると、それに目を付けたフランス資本が中国に相次いで進出し、現地でワイン造りに乗り出す。地元資本も刺激を受けて、高級ワイン造りに舵を切った。これが2番目の要因だ。 3番目は広い国土と多様な気候。探せばブドウの栽培に適した土地はいくらでもあり、これが高級ワインの相次ぐ誕生につながった。
■ボルドー五大シャトーの一つは山東省に
フランス資本の進出はLVMHが一例だが、他にもある。山東省のワイナリー「ロンダイ」は、ボルドー五大シャトーのシャトー・ラフィット・ロートシルトなどを所有するドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト(DBR)が設立した。2008年に苗を植え始め、2017年がファースト・ヴィンテージ。2021年から日本へも輸出を始めた。 北京にも比較的近い山東省は昔からワイン造りが盛んだが、気候が温暖な海洋性気候でボルドーとよく似ているという。ロンダイは主にボルドーの主力ブドウ品種の一つ、カベルネ・ソーヴィニヨンから「ロンダイ」のブランド名で赤ワインを生産している。 日本の輸入業者ファインズのブランドマネージャー、辻本愛子さんは「味わいはシャトー・ラフィットに似て、繊細でエレガント」と説明する。日本での税別参考小売価格は2018年ヴィンテージが1本8万円、2019年ヴィンテージが同10万円だ。
■南部の雲南省でも醸造、ヒマラヤの麓で暑すぎず
新たな高級ワイン産地として注目されているのが、ミャンマーやベトナムなどと国境を接する南部の雲南省だ。中国でのワインビジネスの拡大に意欲的なLVMHは寧夏とは別に、雲南省の山奥にブドウの栽培に適した土地を見つけ、2010年前後から「アオ・ユン」のブランド名でワイン造りに乗り出した。 雲南省は緯度的には亜熱帯から熱帯に属し、暑すぎてブドウの栽培には本来、適さない。しかし、ワイナリーの畑はヒマラヤ山脈の麓、標高2200メートルから2600メートルのところにあり、真夏でも気温が30度を超えることはめったにないという。 アオ・ユンもロンダイと同じく、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のボルドータイプの赤ワインだ。著名評論家のジェームズ・サックリング氏が自身のワイン評価サイトで2020年ヴィンテージに100点満点中で99点を付けるなど、専門家から高い評価を得ている。 輸入業者アークセラーズの社長、佐藤正樹さんは「色合いは紫外線の強さを映して非常に濃いが、味わいはボルドーワインのような、抑制の効いた清涼感のある味わい」と説明する。アークセラーズのオンラインショップでの税込み小売価格は2018年ヴィンテージが1本7万3700円、2019年ヴィンテージが同7万400円となっている。