ガザの惨劇 哲学者・鵜飼哲が語る「大量殺戮の時代」の核心【倉重篤郎のニュース最前線】
ガザ戦争の本質とは? 「『入植植民地主義』は必然的に民族浄化の大量殺戮(さつりく)に至るということだ。日本の満洲侵略も入植植民地だった。地元民と入植者の間で土地の奪い合いになり悲劇が生まれる。1948年の世界人権宣言以降、人権侵害を重ねる植民地支配は原理的に不可能になり、50年代、60年代にアジア、アフリカを中心に世界で植民地解放が進んだ。その流れに逆行するのがイスラエルだ。48年のイスラエルにとっての独立戦争がすでに民族浄化であり、67年以後は第3次中東戦争の占領地からの撤退を求める国連決議を無視し、パレスチナ人から奪った土地にユダヤ人専用住宅地を作り続けてきた。国連によると入植者は約72万人でこの10年余りで約20万人増えたという。イスラエルの現閣僚は何人も入植地に住んでいる」 「ガザでは自分や家族がまもなく殺されることが分かっている人々が、最後の言葉を映像に託してスマホで世界に発信している。人類史的に全く新しい、想像を絶する状況だ。これまでも植民地解放闘争では民間人が多数犠牲になった。アルジェリアのフランスからの独立戦争では、100万人から200万人の死者が出たと言われている。パレスチナは痛ましいことに21世紀もその時代を生きることを強いられている」 「世界史的意味でもう一つの特徴は、イスラエルを批判するユダヤ人が膨大に出てきたことだ。米国、カナダなどを中心に、次第に欧州でも、ネタニヤフのイスラエルこそがユダヤ人にとって最大の危険であり、世界中のユダヤ人の安全を脅かしているという声が大きくなった。イスラエルで自国中心の『洗脳教育』を受けた若者が、米国でパレスチナ人との連帯を表明するユダヤ人が多いことに驚き、強烈なアイデンティティ・クライシスを経験する。そういう例がいくつも報告されている。ユダヤ史の中でも決定的な局面だ」 ◇ ◇ 「法の支配」というのは、軍事大国・米国の十八番のセリフだが、軍事に頼らぬ国際法の実効化・支配、という道を日本はもっと模索すべきではないのか。