【分析】暗号資産市場は拡大しているのか? ドミナンスやビットコイン現物ETFなどのデータから変遷を紐解く
ステーブルコインのドミナンス推移
ステーブルコインのドミナンスは、USDT、USDCが大半を占めていますが、近年ではDAIやUSDeなど、比較的新しいステーブルコインも登場してきました(この図で紫色と黄色に当たります)。 一方で、市場で存在感を失ったBinanceUSD(BUSD)などのステーブルコインもあります。 BUSDはステーブルコイン発行企業Paxosと大手暗号資産取引所Binance U.S.(以下、バイナンス)が提携し、米ドルと1:1でペッグしたステーブルコインです。時価総額第3位のステーブルコインとして存在感を増していた同コインですが、2022年12月13日 にドミナンスが大幅に縮小します(図の赤い四角)。 2022年11月に起きた大手暗号資産取引所FTXの破綻事件を受け、米国法務省は暗号資産産業のマネーロンダリングや財務健全性の調査を実施しました。バイナンスに対する調査開始後、FTX創業者の Samuel Bankman-Fried氏(以下、バンクマンフリード氏)がバハマにて逮捕されました。さらに米国法務省はバイナンスと同社CEOのChangpeng Zhao 氏を起訴。 バンクマンフリード氏の逮捕とバイナンスの起訴、同年5月のテラ・ルナショックで暗号資産投資家の不安が募る中、BUSDからの巨額の資金逃避が予想されました。これに対し、バイナンスは8時間に渡りUSDCの出金を停止、ユーザーのUSDCをBUSDに強制スワップするなどBUSD保護の路線を明確にしましたが、時価総額の減少に歯止めをかけるには至りませんでした。 次なるBUSDのドミナンス縮小は2023年2~3月にかけて確認できます(黒色四角)。22年度のテラ・ルナショックに対する余波や以降のステーブルコインのデペッグ頻発により、BUSDも金融当局の調査から逃れることはできませんでした。2023年2月12日、BUSD発行企業Paxosへのウェルズ通知(法的措置の事前通知)がSECより送付されると、Paxos社はBUSDの発行停止を発表。翌3月には、米国最大手暗号資産取引所CoinbaseがBUSDの上場を廃止し、同年8月にはバイナンスも同コインのサポートを終了することとなりました。かくしてBUSDはステーブルコインの表舞台から姿を消しました。